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デーモンハント

第5章 傷

シフォンが明るく答えたので、ソレルは笑顔を見せ、店主の方を見る。

「では、このバングルを二つください」

ソレルが店主に注文すると、初老の店主は「どうも」と頭を下げてバングルを小さな紙袋へと入れた。

「有難うソレル」

嬉しそうにエルザが言ったのを見て、ソレルも嬉しそうに微笑む。
両親を失ったあの日から、エルザは悪魔を殺すことだけを考えて生きて来た。
しかし、シフォンという少女との出会いで、エルザは少しずつ変わっていっていると、ソレルは思う。

何より、笑顔が年相応の愛らしいものに感じる。

「ソレルさんはアクセサリーとか着けないの?」

ふと思い立ったのだろう。
シフォンが聞く。

悪魔であるソレルは、魔除けの力がある金や銀は避けていた。
悪魔の中にもアクセサリーを好く者はいるが、人間の住む世界の物とは異なった素材で作られている。

しかし、今その事を説明する事はできないので、ソレルは「金属アレルギーなんです」などと適当な事を返した。

当然、エルザはアクセサリーを着けない理由を知っているので、ソレルの言葉に口を挟むような事はしない。

代金を支払い、ソレルは受け取った紙袋をシフォンに渡す。

「有難う、ソレルさん」

シフォンは満面の笑顔で言った。

「たまにはご褒美も必要ですからね、では、次のお店に行きましょうか」

ソレルが言うと、シフォンは「ちょっと待って」と声を掛ける。

「どうしました?」

きょとんとした顔でソレルが聞くと、シフォンはもじもじとしながらエルザとソレルの顔を見た。

「ちょっと疲れちゃって……わがままを言って悪いのだけど、公園で一休みしていい?」

そう言ったシフォンの顔色は、確かに悪い。
その事に先に気付けなかったエルザは、済まなそうな顔になった。

「あぁ、気付けなくてごめん、一休みしましょう」
「エルザは悪くないの!謝らないで……私が弱いから……」

今にも泣き出しそうな顔でシフォンが言う。

「じゃあ公園に行きましょう、ベンチで休めば少しは良くなるでしょうから」

二人の悲しげな空気を変えるかのように、ソレルは笑顔で言って、公園に向かってさっさと歩き出す。

エルザとシフォンはそんなソレルの背中を見て、繋いだ手に少し力を入れた。
そして二人も、公園に向かって歩き出した。

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