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デーモンハント

第5章 傷

エルザはコーヒーを置いて、ソレルを見る。

「あの悪魔、この場所にも気付いているかしら」

そうエルザが聞くと、ソレルは頷いてため息をつく。

「気付いているでしょうね、ただ、この家は俺が張った結界があるので、入って来る心配はありません」

ソレルは言って、コーヒーを飲む。
コーヒーの湯気が、ふわりと空中に溶けていく。
シフォンと出会うより前に、この家にソレルは結界を張っていた。
エルザが悪魔に狙われないようにと、張ったものだ。

ソレルが使った結界というのは、他の悪魔の侵入を防ぐ効果がある。
そのため、仮面の悪魔が入って来る心配は無いが、この場所がバレているのならば、シフォンを外に連れ出す事はできない。

「何処にいるのよ、あの悪魔」

公園でシフォンに近付いたのならば、案外近くにいるかもしれない。
だというのに、居場所が掴めない現実に、エルザは苛立ちを隠せないでいる。

「……ケイシーさんに連絡して、デーモンハントが所持している仮面を借りることはできるでしょうか?」

ソレルがエルザに聞く。

「できるかもしれないけど、何で?」

不思議に思い、エルザが聞き返すと、ソレルは指で頬を軽く掻き、エルザを見た。

「仮面があれば、彼を探せます」

そう言われ、エルザは驚いて立ち上がる。
椅子がガタンと音を立てた。

そしてエルザはテーブルを叩いて、ソレルの方に身を乗り出す。

「どういう事?探せるって、本当なの?」

そう問いかけるエルザの声に、怒りの感情が混じる。

「本当です」

へらへらと笑いながらソレルが返すと、エルザは眉間にシワを寄せた。

「今まで探せるのに探さなかったってこと?!何で早く言わなかったのよ?!」

思わずエルザの声が大きくなる。
ソレルは人差し指を口にあてながら「しー」と言う。
はっとしてエルザは口を閉じ、椅子に座る。

「黙っていてすみません、マイナスな点が多いので隠していました」

静かな声で伝え、ソレルは頭を下げた。
ソレルが隠し事をしていた事が何と無く気に食わず、エルザは苦い表情になる。

「……分かった、とにかくすぐにケイシーに連絡をとってみる」

怒りを何とか落ち着かせながら、エルザは携帯を取り出した。

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