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デーモンハント

第5章 傷

エルザは連絡先を選び、画面をタップすると携帯を耳に当てた。

呼び出し音が鳴り、四回コールしたところでケイシーが出る。

「エルザ、どうした?」

電話の向こうからケイシーの声がした。

「急にごめんなさい、お願いしたい事があるの」

エルザが言うと、ケイシーは「何だ?」と聞く。
エルザはソレルの事をチラリと見てから、口を開いた。

「実は、仮面の悪魔が残していった仮面を貸してほしいの」

そうエルザが言ったのを聞いたケイシーは、何かを考えるように無言になる。
やはりデーモンハント側で管理している物を借りるのは難しいかと思い、エルザは口をきゅっと結ぶ。

「何に使うんだ?」

少しの間を置いて、ケイシーが問いかけて来る。
当然の質問だろう。

「仮面があれば、ソレルが相手の居場所を見つける事ができるの」

ソレルが悪魔だという事も把握しているケイシーに、嘘をつく必要は無いと判断したエルザは、素直に答えた。

「なるほど。なぜ今までその事を言わなかった?」

疑問に思ったのだろう。
ケイシーが聞いてくる。

「何か、マイナスな点があるから言わなかったらしいわ」

エルザが返す。

「マイナスな点とは?」

ケイシーに聞かれ、エルザはソレルのことを見た。
視線を向けられたソレルは、口に含んでいたコーヒーを飲み込み、にっこり笑う。
そしてエルザは携帯をスピーカーに切り替えてテーブルの上に置く。

「マイナスな点は、俺の魔力を覚えられることと、探していることがバレること、それから、俺の記憶を見られることですね」

ソレルが言うと、ケイシーはため息をこぼす。

「お前の魔力など、とっくに覚えられているだろう。探していることも把握されている。それに、お前の記憶が見られたところで、相手にとって大した利益にはならないだろう」

ケイシーに言われ、ソレルは困ったような顔になった。

「記憶が見られるのは恥ずかしいです」
「知ったことか」

即座にケイシーに返され、ソレルはしゅんとする。

「俺に人権は無いんですね」

寂しげにソレルが言うと、ケイシーは「悪魔なのだから当たり前だ」と冷たい言葉を返した。

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