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デーモンハント

第5章 傷

更にソレルは肩を落として、背を丸めてしまう。
そんなソレルを見ていたら、隠されていたことへの怒りなどどこかへ飛んでいってしまい、エルザはふぅ、と、息を吐く。

「事情は分かった。すぐに本部に仮面を取りに来い、エントランスで人を待たせておく」
「有難う、ケイシー」

エルザがお礼を言うと、ケイシーは「ではな」と言って電話を切った。
エルザは携帯を手に取って、まだしゅんとしているソレルを見る。

「行くよソレル」

エルザはコーヒーをぐっと飲み干して立ち上がった。
ソレルもコーヒーを飲み、自分とエルザのカップを持ってキッチンに入る。
カップを流し台に下げ、ソレルはキッチンを出た。

エルザはシフォンが起きた時のことを考え、書き置きを準備する。
仮面を取りに行くとは書けないため、急用でデーモンハント本部に行くとだけ書いた。

書き置きをテーブルに置き、エルザは玄関に向かう。
ソレルは車の鍵を持ち、エルザの後ろについて行った。



約一時間後、デーモンハント本部に到着したエルザとソレルは、エントランスに入って周囲を見回す。
ケイシーが人を待たせておくと言ったので、それらしき人物を探した。

すると、受付から少し離れたところに、一人の女性が立っていた。
大きめなメガネをしていて、ふわふわとした淡い桃色の髪をした可愛らしい雰囲気の女性だ。
年齢はパッと見では十代後半程度に見える。

彼女は紙袋を大切そうに抱え、キョロキョロと辺りを見回していた。

「すみません」

エルザが声を掛けると、女性は驚いたのか、軽く飛び上がる。
そしてエルザとソレルを確認すると、小走りで近付いて来た。

「え、エルザさんですか?」

聞かれ、エルザは頷く。
すると彼女はソレルのことを見上げてごくりと喉を鳴らした。

「で、ではあなたが、悪魔のソレルさんですね?」

緊張しているのか、声が裏返っている。
ソレルが「はい」と笑顔で返すと、女性は身構え、固い動きでエルザに紙袋を差し出した。
悪魔であるソレルに怯えているのか、手が震えている。

エルザは苦笑しながら紙袋を受け取ると、中を確認した。
中には紙にくるまれた仮面らしき物が入っている。
間違いなくこれが仮面だと確信したエルザが女性を見ると、今にも噛みつきそうな表情でソレルを警戒していた。

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