無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

ソレルの頭の中に直接、映像が流れ込む。
そこはカジノのようで、汚れたスロット台や壊れたルーレットテーブルのような物が見えた。

薄暗い中に黒いヤギの頭に人間の体がついた悪魔が、何体かいるのが見える。
奴らは人間の女性の腹を食いちぎり、腸を食べていた。

ソレルは更に集中し、そこがどこなのかを探る。
すると外の景色が見え、ソレルはそこが市場の近くにある、潰れたカジノである事を把握した。

ソレルは目を開く。

「どう？ソレル？」

エルザが前のめりになりながらソレルに問い掛けると、ソレルはにっこり笑う。

「潜伏場所が分かりました、市場の北にある、潰れたカジノです」

それを聞き、エルザは「よし」と言ってガッツポーズをした。

「早速行くわよ、ソレル、車を出して」

エルザは立ち上がる。
ソレルが返事を返して、仮面を袋にしまうと、車の鍵を持つ。

その時だった。

「エルザ？ソレルさん？どこか行くの？」

いつの間にか、シフォンが立っていた。
彼女は不安そうな顔をしながら、二人の事を見ている。

「あ……シフォン」

エルザが少し焦りながら言葉を探す。

「急ぎの仕事です、シフォンさんは家から出ず、休んでいてください」

ソレルは優しい口調でシフォンに伝える。

「……気をつけてね、早く帰って来て」

シフォンは泣きそうになりながらも、不安を隠して笑顔を作った。
エルザはそんな健気なシフォンに頷いて返すと、玄関へと歩いて行く。
ソレルは笑顔を返し、紙袋を持つと、軽く手を振ってから出て行った。

シフォンは二人を見送り、顔を両手で隠す。
必死に声を抑えながら、静かに泣いた。