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デーモンハント

第8章 シフォン

家を出たエルザは、ソレルの方を見る。

「あの悪魔、どこにいるの?」

エルザが聞くと、ソレルは笑みを見せた。

「あの潰れたカジノに戻っていますよ、よっぽど居心地がいいのでしょうね」

ソレルが返すと、エルザは苦々しい表情になる。

「車はそのカジノにあるし、どうやって行こうかしら……」

眉間にしわを寄せて、エルザは爪を噛む。
するとソレルが、ひょいとエルザをお姫様抱っこした。
それに驚いてエルザがソレルの顔を見ると、ソレルは優しい表情でウインクをして、そして空中に浮かび上がる。

「ちょ、ソレル?!」

慌ててエルザはソレルに抱きついた。

「飛んで行きます、急がないといけませんからね」

ソレルはそう言うと、上昇し、あっという間に街を見下ろせるくらいまで飛び上がる。
そしてソレルはカジノのある方へと向かい始めた。

エルザはソレルに抱きつきながら、ソレルの事を見つめる。

「あの……ごめんね、ソレル……」

エルザが溢した言葉に、ソレルはきょとんとした。

「どうしたのですか?謝るなんて?」

ソレルが聞くと、エルザは手に力を入れる。

「アタシ、ソレルに負担ばかりかけてる……アタシがバカなせいで、沢山傷つけてる……だから」

エルザが言葉を続けようとした時、ソレルがエルザの額に口付けをした。
驚いてエルザが言葉を途切れさせると、ソレルはにっこり笑う。

「俺は負担とは思っていませんし、何より好きでこうしているのですから、謝る必要はありませんよ」

ソレルに言われ、エルザは瞬きをする。
優しい声に泣きそうになるが、エルザはぐっとこらえて微笑んだ。

「有難う……本当に有難う、ソレル」

エルザが言うと、ソレルは少しだけ頬を赤くして。

「最高の言葉です」

と返した。

そんな会話をしていると、遠くにカジノが見えてくる。

「さぁ、目的地に到着しますよ」

ソレルに言われ、エルザは表情を険しくしてカジノを睨む。
そこに助けなければいけない存在と、殺さなければいけない存在がいるのだと思うと、エルザの目付きは鋭くなった。

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