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シャイニーストッキング

第2章 絡まるストッキング1

 102 武石健太 ⑪

 えっ、俺を試してるのか…
 爪先を顔前に運び、俺のストッキングフェチ度、脚フェチ度を試してきているようなのである。
 じゃなくちゃ、俺の潜りと同時のタイミングで、床上に横座りしていたこの左脚が今、俺の目の前にある訳がないのだ。

 蒼井美冴、そうか、そうなのか…
 
 俺の昂ぶりは、ドキドキがらズキズキへと、疼きの昂ぶりに変わってきたのである。
 そしてその爪先が、ゆっくりと俺の鼻先に動いてきていたのだ。
 鼻先には彼女の爪先が放つ、甘いムスク系の香りが漂ってきていた。
 ストッキングに包まれたピンク色のペディキュアの爪先がゆっくりと目の前に伸びてきて、鼻先に触れようとしてきていた。
 そして俺はその爪先を待ち構える。

 ドキ、ドキ、ドキ、ドキ…

 と、その時である

「武石さぁん、お箸取れましたかぁ」
 今、正に、彼女の爪先が鼻先に触れるという直前であった、越前屋がそう言って堀コタツの中を覗いてきたのだ。
 その瞬間に爪先はスッと動き、目の前から消えた。

「あっ、うん、取れたよ…」
 俺はそう言って、手にした箸を越前屋の目の前に見せたのだ。

「よっこいしょ」
 俺はそう言って上半身を起こし、脇に座っている越前屋の肩越しに、蒼井さんの顔を見る。
 
 あっ…
 ほんの一瞬、一瞬だけ目があったのだが、その時に
「おおっ、上野くん来たか、お疲れさま」
 そう言う大原本部長の声がして、蒼井さんはスッとそっちに視線を動かしたのだ。

「あ、上野さん、お疲れさまです」
 酒が入っていい感じの越前屋がそう声を掛けた。
 さっき大原本部長に言われて電話をして呼んだ、6人目の『準備室』のメンバーである、上野涼子が到着したのである。

「さあ、みんな6人目を紹介しよう」
 大原本部長がそう云う。

「上野涼子です、よろしくお願いします」
 スラッとして、ヒョロッと細い、彼女がそう頭を下げながら挨拶をしてきたのだ。

 くそっ、いい所だったのに…
 だが、蒼井さんは俺を一瞬だが見てきていた。

 間違いない、確信犯だ…
 そう思った途端にドキドキがザワザワに変わっていくのを感じていたのである。

 佐々木ゆかり部長に、この蒼井美冴さん…

 この二人に俺は囲まれて、いや、挟まれて、
この先どうなっていくのかが楽しみである。








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