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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 52 大原本部長との電話(5)

『はい、わたしです…』
 この昂ぶる想いを悟られない様に…
 と、できるだけ落ち着いたフリの声でそう応える。

「いやぁ、今日は本当に疲れたよ…」

 彼はそうひと言呟くと、一気に今日のゴルフの話しをしてきた…

 …その日のゴルフは、やはり予想通りにボロボロであった。
 いくら序列的に私の方が上の立場となったとはいえ、威丈高な態度も言葉も取れず、朝イチのプレイ開始から気を遣い捲りとなったのである。
 そして当然それはプレイにも影響を与えてしまい、スコアはグッと落としてしまった。
 だが、そんな私の態度と姿勢が却って良かったらしく、松本副社長の目にはそんな気遣いを良い方で捉えてくれ、目にも映ったようであったのである。
 そしてプレイ中の会話で松本副社長も野球部出身者であり、私同様な理由で泣く泣くその先の野球の道を諦めたという事がわかり、そんな偶然までも全てが、私にとっては良い流れとなったのだ。
 そして松本副社長はスコアも良かったので結果的には、それも私への後押しとなったようであり
 山崎専務曰く…
 最高のご機嫌だそうだ。

「なかなか良いぞ…」
 そして山崎専務が、プレイ後の風呂でそっとそう耳打ちしてくれた。
 とりあえずはゴルフ初日を何とか無事に済ませる事が出来たんだよ…
 と、ここまで一気に話してきたのである。

 なんとなくその彼の声は弾んでいた…


『へぇ、それは良かったですねぇ…』
 そしてわたしはそう返す。

 どうやらそんなゴルフの後で穏やかに夕食を済ませ、軽くラウンジにて飲んで解散した後、部屋に戻って直ぐにわたしに電話を掛けてきたそうである。
 時刻は昨夜同様に午後10時半を過ぎた辺りであった。

 そして明日もラウンドするから…
 と、ゴルフに真剣な松本副社長の計らいにより早目の解散となったそうだ。
 

「そうなんだよ…
 ま、偶然の重なりの結果なんだがね…」
 やはり声が弾んでいる、上機嫌といえる。
 
『偶然とはいえ良かったですね』

「うん…」
 そんなわたしの言葉に、本当にホッとた声で返事をくれた。

『お疲れなのに電話してくれて嬉しいわ、もしかしたら疲れ果てて寝落ちしちゃうかも?って思ってはいたの…』

 これは本当にそう思っていた。





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