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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 105 黒歴史…(40)

 あ、そういうことか…

 多分この瞬間に、わたしの目がそんな三山圭子の言葉の意味を理解した光りを放ったのであろう。

「うん…そうなのよ…
 もう潮時…
 終わりにして下さるかしら…」
 すかさず、三山圭子はそうわたしに言ってきたのである。

 蓮の女装…

 それは実の母親であり、大女優であるこの三山圭子を意識した女装…
 いや、正に、本人に完全になり切った女装であった。

 そしてそれは蓮にとっては…

 マザコンを通り越した、母親に対しての禁断の想いの現れ…

 そしてそれは、三山圭子にとっての…

 アンタッチャブルなエリアであり領域なのだ…

 いや、そうなのであろう…

 そして実は、家政婦のお清さんは、そのお目付役なのだ。

 おそらく、黙ってじっとわたし達を、その三山圭子のアンタッチャブルな禁断のラインを越えるのを観察していたのだ…
 そしてわたし達はその禁断のエリア、領域のラインを踏み込えてしまったのである。


 間違いない…

 そして…

 それによりわたしは、三山圭子のアンタッチャブルな世界に足を踏み入れてしまった…
 と、いう事なのだと思われた。

 だから…

 もう…

 三山圭子の母親としてのかわいい蓮とはもう別れ、いや、離れて…

 終わりにしろ…
 と、云ってきたのであろう。

 いや、云ってきたのだ…

「はい、これ…」
 するとおもむろに三山圭子は紙袋を出して、わたしに差し出してきた。

「ゆかり姫…さん、アナタにも色々な言い分もあろうとは思いますが…
 とりあえずこれで納めて下さらないかしら…」
 そう言いながら三山圭子は、その紙袋を、いや、某銀行の紙袋をわたしに手渡してきたのである。

「あ、え、いや…これは…」
 わたしはそう言葉を返す。

「いいのよ…ほら受け取って…
 これでね…意味、わかるでしょう…」
 そう言いながら無理やり手渡してくる。

 その感触は、束が二つ?あった感じがしたのだが…

「あ、いえ…
 受け取れません、いらないです…」
 わたしはそうはっきりと毅然と応え、その紙袋を返した。

「え…
 いや、これはわたしの気持ちだから…」
 三山圭子もそう言いながら紙袋を引っ込め様とはしない。

 要は口止め料なのだ…

 そして手切れ金のつもりなのだ…






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