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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 106 黒歴史…(41)

「えぇ、いや、これはわたしの気持ちだから…」

 要は口止め料なのだ…

 そして手切れ金のつもりなのだ…

「そもそも、そんなつもりは毛頭ありませんから…」
 わたしは更に毅然と答えた。

 そんな自分のクビを絞める様な暴露等をするつもりは毛頭無い…

「それに…わたしは…
 お金に興味は全く無いので…」
 続けてそう言った。

 そう、今もそうなのであるが、わたしは子供の頃からお金の苦労をした経験が全くなかったし、欲望もなかったのだ…
 そしてこれまでの人生の中でも競争心や、嫉妬心等の感情もほぼ持った事が無い程に恵まれて、穏やかに育ってきたのである。

 だから、お金…

 口止め料的なモノには全く興味が無かった…

「あら…そうなの…
 さすが、ご高名な会計士さんのお嬢様だけはあるわね…」
 すると突然、三山圭子はそう言ってきたのだ。

「えっ…」
 さすがのわたしも、その彼女の言葉には驚いた。

 つまりそれは、わたしのことは全部調べ尽くしてあるという意味である…

 だから色々と巻き込みたくなかったならば、蓮との事は静かに終わらせろ…
 そういう圧力の意味なのであろう。

 おそらくこれまでも何度となく、蓮が女装癖をさらけ出した時点で、こうして三山圭子本人が顔を出してお金の力で終わりにしてきたのであろう…

 ただ…

 相手がわたしであったから、お金の力は効かなかっただけなのだ…

「さすがね…ゆかり姫…さんは…」
 と、三山圭子は不思議な笑みを浮かべながらそう呟き、そして踵を返し、わたしに対して背中を向けた。

 これは暗に、もう帰れ…

 これで終わり…

 二度とここには…

 このわたしと蓮の家には…

 来るな…

 という、意志表示であろう…
 と、思われた。

 そして…

 わたしと蓮の関係は、三山圭子本人の登場により、こうして終わりを告げたのである。

 ちなみにその時蓮自身がわたしを呼び出したのにも関わらずに一度も姿を見せなかったし、その後の電話着信さえも無くなった。

 これは、蓮にとっては珍しい事では無いのだろう…
 後日、わたしはそう思ったのである。

 そしてわたし自身もこの出来事により、なんとなく大麻への想いが一時的に失われ、その代わりにスキューバダイビングにのめり込んでいった…

 


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