テキストサイズ

シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 142 8月10日午後9時45分

 わたしはタクシーで自宅に戻ってきた。

 さっきの杉山くんのおかげで、急な大原本部長との逢瀬のキャンセルの悲しい想いや不安な気持ちが、かなり和らぎ、軽くなった…
 そして帰宅そうそうにシャワーを浴びる。

 夕方以降、彼、大原本部長からの着信は無かった…
 彼のお母様が『急性心筋梗塞』で倒れ、彼が急遽、慌てて実家に帰るという緊急事態が起きたのだ。

 だから心配で不安な想いが湧いてはいたのだが…
 果たしてわたしの方から電話を掛けて良いのか迷っていた。

 万が一、タイミングが悪かったらイヤだし…
 
 わたしはシャワーから出て、寝支度を整えながら電話をどうしようか…
 と、迷い、考えていたのである。

 ただ、今夜の杉山くんの明るさにより、心はかなり軽くなっていたし、昨夜の様なカラダの疼きも今のところ落ち着いてはいた。
 だが、一つ、新たな問題が発生してしまったのだ。

 それは…
 わたしのこのお盆休みのスケジュールが、狂ってしまったという事である。

 本来の予定は…
 今夜の10日、11日、そしてできれば12日の昼頃までを彼、大原本部長と過ごすつもりであった。
 だが、おそらくお母様の状況にもよるのだろうが、早くても彼に逢えるのが15日の夕方以降になってしまったのである。

 元々彼は、亡き父親の10回忌の予定があり、12日の夕方に帰省し、15日の夕方以降に東京に戻る予定になっていたのだ…
 だが、急遽、お母様の発症により、今日10日に慌てて帰省してしまったのだった。

 だから、わたしのとりあえずの15日までの予定がスッポリと空いてしまったのである…
 元々、明日11日の昼間は当番出勤を入れていたけれども、夜からは完全にフリーになってしまったのだ。

 どうしようか…

 久しぶりに実家に帰ろうか?…

 だが実は、約三年前の離婚から、なんとなく実家に帰り辛くなっていたのである。

 具体的にその離婚について何かを両親から云われた事は無いのであるが…
 なんとなく帰り辛いのであった。

 だからといって他に予定は無いし、友達もいない…

 無理やり一人でショッピングに行く等をしても一日しか潰せないし…

 あ…
 そう逡巡していると、ふと、蒼井美冴さんの顔がまた浮かんできたのだ。

 そうだ、美冴さんがいた…



ストーリーメニュー

TOPTOPへ