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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 143 美冴さんとの電話(1)

 そうだ、わたしには美冴さんがいたんだ…

 友達になったんだ、いや、なってくれたのだ…

 さすがにお盆休み中に、毎日健太と一緒という事は無いであろう…

 そうなんだ、わたしには美冴さんがいた…

 時計を見ると間もなく午後11時。

 遅過ぎず、そして早過ぎず、電話をするにはちょうど良いタイミングかもしれない…
 わたしはそんな逡巡の挙げ句、美冴さんのダイヤルメモリーを押す。

 プルプル、プルプル、プルプル…

『はい、もしもし……』

 電話の向こうから、美冴さんのややハスキーな声が聞こえてきた…


「あっ、もしもし、佐々木です、大丈夫?…」
 わたしは美冴さんの声を聞いた瞬間に、なぜか、急ににドキドキしてしまう、そして僅かに三日振りなのに、すごく久しぶりにも感じてしまっていた。

『はい、ゆかりさんこんばんは、どうしました?…』
 
「あっ、いえ、あ、そのぉ、どおしてるかなぁって…」
 そしてわたしは、ややキョドった感じになってしまう。

 なんか、こんな気楽に電話しても大丈夫だったのだろうか?…
 考えるとわたしは過去に、用事が無くて同性の女性に電話をした事が無かったのである。

 あ…、いや、用事はある…

 誘うんだ、そう、誘わなくては…

 すると美冴さんは…
『あ、はい、実は…元カレと会ってました…』
 と、そう言ってきた。

「えっ、そ、そうなのっ、電話大丈夫なんですか?」

 あ、ヤバかったか、タイミングが悪かったのか…
 わたしは一気に慌ててしまう。

『あっ、はい、大丈夫ですよ、ちょうど今別れたところですから』
 と、意外に明るく言ってきたのだ。

「ならよかった…」
 わたしはホッと胸を撫で下ろす。

 良かった、悪いタイミングではなかったようだ…

『はい、あのぉゆかりさん、今、ちょうど帰宅途中なんで、家に着いたら掛け直しますよ…』
 すると美冴さんはそう言ってきた、そして…
『えっ…とぉ、うん、後10分か15分位で家に帰るんで、少しだけ待ってて下さいね…』
 こう言って電話を切ったのである。

「ふうぅ…」
 電話が切れた瞬間に、わたしは吐息を漏らしてしまう。
 
 それは、たったこれだけの会話なのに緊張してしまった安堵の吐息であった…





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