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　151　美冴さんとの電話（9）

　『そうかぁ…』
　すると美冴さんはそう呟いてきた。

　どうやら美冴さんなりに、わたしの意見に納得できたようなのかもしれない…

「その彼に、ううん、その彼の５年越しの思いを遂げさせてあげればよいのよ…」
　そしてわたしは思わずそう囁いてしまった。

　だからこそ、それを逆手に取って、今後、美冴さん自身を優位に保てるようにパワーバランスを上手くコントロールさえ出来れば、その元カレは今後の美冴さんに対して従順になるのは明白なのである…

『そうかぁ、ヤラせてあげる…なのかぁ』
　また再び美冴さんはそう呟いてくる、きっと何かを思ったのかもしれない。

　少なくともわたしにはそう伝わってきた…

「わたしの場合はさぁ、その後は落ち着いているわよ…」

　いや、今はわたしの欠かせない片腕に近くなっているのだが…

　さすがに本当の事は話せない…

『そうなんですか…、そうなのかぁ…』
　すると美冴さんは感心したかの様に呟いてきたのだ。

「うん、そして従順になっているわ…」

『えっ、最近も会ったんですか？』
　すると、少し驚いた感じでそう訊いてきた。
　
　えっ…

　もしかしたら分かっちゃったのか…

　その美冴さんの驚きの反応に、わたしは一瞬、ドキッとしてしまう。

「え、あ、ううん、違うわ、最近は会ってはいないわよ…」

『なんだぁ、そうなんですかぁ…』
　
　まさか…

　いや、健太自身もさすがにわたしの事については話さない、話す訳がないはずだ…

　だいたいが話す理由がない…

　そして健太自身も過去の事だと、心の奥深くに封印している筈なのだ…

　なぜならば…

　こんなに素敵で、素晴らしい美冴さんという女性を手に入れられたのだから…
　わざわざ自ら、波風を立てる意味がない筈だからである。


「あぁ、うん、もうしばらく顔も見ていないわぁ…」
　とりあえず美冴さんには、しばらく顔も見ていないと言った。

　逆に、そんな美冴さんの元カレを見てみたい…
　そう思う。

　どんな感じなんだろう…

『でも、ゆかりさんの云ってる意味、よぉく分かりました…
　今度、確認してみます、そして場合によっては、仕方なく…』

　ヤラせてあげてみますから…