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　152　美冴さんとの電話（10）

『…で、そして場合によっては、仕方なく…』
　ヤラせてあげてみますから…
　美冴さんはそれは言葉には出さなかったのだが、確かにわたしの心にはそう聞こえてきたのである。

「多分、それが一番よい方法かも…」

　確かにそうかもしれないが…
　ある意味、わたし自身が物凄い意見を言ってしまった様にも感じてしまっていた。
　
　少し、調子にのって話し過ぎちゃったかもしれない…

『でも、ゆかりさんの云ってる意味、よぉく分かりました…
　そして場合によっては、仕方なく…
　ヤラせて踏ん切り付けさせちゃいますから…』
　再び美冴さんはそう言ってきた。

「多分、それが一番よい方法かも…」

　わたしの経験上はそれが一番である…


『なんかぁ、わたしも段々とそう思ってきましたぁ…
　そうなんですよねぇ…
　男と女ってきれい事だけじゃあ済まないんですよね…』

　そうなのだ、所詮、男と女の関係なのである…

　行き着くところは、やるか、やらないか…

　やられるか、やらせないか…
　そう一番重要な事は、セックスなのだとわたしは思う。

　どんなにきれい事を云ったって、男と女の関係の間にはセックスというモノの存在が重要で、必要不可欠なのだ…
　と、思うのである。


「まあ、男と女の関係なんてそんなモノじゃない？…」
　わたしはすっかり調子に乗って、そんなややドライ的な持論を話してしまっていた。

　ついこの前は…
　わたしと友達になって欲しいの…なんてウエット的に自ら哀願したくせに…

　今はすっかり調子に乗って、こんなドライ的な恋愛論を語ってしまっている…
　少し恥ずかしくなってきていた。

　万が一、今度、美冴さんが健太に、わたしの大学時代の事を訊いてくるかもしれない…

　絶対に口止めしておかなくては…

『あ、そういえば大原本部長はいつ戻ってくるんですか？』
　そう思っていると、美冴さんが突然、話題を変え、そしてそう訊いてきた。
　
「えっ、あ、うん…」

　すると、わたしはすっかりその問い掛けに動揺してしまい、さっきまでのやや調子に乗っていた様な口調と、声のトーンがさっきまでのドライからウエットに変わってしまう。
　なんかその動揺が気恥ずかしかった…

「ええ…と、明後日の12日の予定だったんだけど…」