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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 155 疼き…

 わたしは疼いていた…

 確かあの夜は美冴さんと二人で初めて食事に行った夜だった…

 それまでの美冴さんは『黒い女』と陰で呼ばれる程にいつも黒い服を着て、そして寡黙な女性であったのだが、ある時突然、本人曰く『覚醒』をした…
 といい、現在に至っているのだが、あの夜にこれまでの美冴さんの生き様と経緯と様々な想いを打ち明けられ、感銘し、感動をし、そして思わず感極まってしまって涙を溢してしまったのであったのだ。

 だが彼女はわたしの涙により、急な覚醒のせいで自律神経が不安定な心を刺激されてしまったらしく、それまで思っていた『初めての嫉妬心』や『憧憬』のわたしの目に刺激を受けてしまい…
 美冴さん曰く『欲情してしまった』と言い、そしてその流れで銀杏並木道のベンチでわたしにキスをしてきたのであった。

 だがわたしは…
 どんなカタチであれ同性の女性とのキスは初めての経験にも関わらず、そして同性愛的な嗜好、思考等も一切意識をした事が無いのにも関わらずにその美冴さんからのキスに対して嫌悪感も無く、いやむしろ逆に昂ぶってしまったのである。

 そう、心をときめかせてしまったのだ…

 そして今…

 そんな美冴さんを想い浮かべさせてくるこのムスク系のお香の香りによって心を昂ぶらせ、いや、疼きを覚えてしまったのだ。

 そしてこの疼きは…

 欲情の疼きといえる…

「あぁぁ…」
 この甘いムスク系の香りが美冴さんを意識する心を更に昂ぶらせ、そして欲情の想いが子宮を疼かせてくる。

 わたしは過去の性的な目覚めの衝動のせいなのか、中等部時代に同級生の女子とアソコを、いや、クリトリスを弄り合うという経験があった…
 のだが、それは決して同性愛的な昂ぶりではなく、おそらく思春期に於ける性的目覚めの衝動によるものであり、お互いの性器のみを弄り合うという、つまり、キスや胸へのタッチ、ましてや相手に恋い焦がれる様な感情等は一切無かった。
 だから、突然の美冴さんとのキスは、つまりは同性とのキスは初めての経験であったのだ。

 だが…

 この昂ぶりと疼きはあの時とは違う…

 つまりは心の奥底深くに、美冴さんに対する恋慕的な同性愛的な憧憬の想いを自覚してきていたのである…

 まさか…

 わたしは…

 そんな昂ぶりと疼きに、戸惑いと動揺を感じていた…





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