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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 202 憧れの存在

「ま、杉山くんには想像も付かないわよ…
 エグゼクティブじゃなければ年末にフィジーなんて、いや、そもそも海外なんて行けないのよ」

 遠い目をしてそう言ってくる…

「そんなぁ、エグゼクティブなんてぇ…」
 それは最近流行っている言葉であった。

「もお、何を仰ってるんですかぁ…
 世の中は、上に昇りたくて、上がりたくて藻掻いている輩が沢山いるんですからぁ」

 確かにそれは分からなくもないのだが…

「だから佐々木部長は凄いんですよぉ…
 わたし達の、そしてコールセンター部のスタッフ全員の憧れなんですからねぇ」
 と、まで、彼女は言ってくる。

「お待ちどうさまです」
 と、そのタイミングで料理が数品運ばれてきた。

「…とりあえず食べよっか」
 いいタイミングであった。

「あ、はぁい…」
 すると彼女はニコニコしながら返事をしてくる。

 本当に明るくて可愛い…

「確かに…エグゼクティブかぁ…」
 だが、杉山くんはまだ呟いていた。

「俺、最近、部長と同行して、なんか少し距離感近くなったなぁって喜んでいたんすけど、図々しかったっす」
 と、珍しく真面目な顔をしてそう話してきたのだ。

「うん、それは図々しいかもぉ」
 そして彼女はそんな杉山くんては対照的な、正反対な笑顔でそう言ってくる。
 また、隣の鈴木くんも笑いながら頷いていた。

「だいたいねぇ、この若さで部長に、それに『新プロジェクト室長』兼任なのよぉっ、しかも、ウチはそこらの小さな会社じゃないのよ…
 世間で云われている処の超一流商事会社の部長さんなんだからねぇ…
 しかも女部長なんて、社内でも殆ど居ないわけだし…」
 と、彼女は何でも知っているみたいに語ってくる。

「あ、はぁ…」

「それを杉山くん如きが、近しく感じるなんて百万年早いわよ」

「あ…、それ、この前部長に云われたっす」

「え、あ、うん、でも意味が違うから…」
 と、わたしは慌てて突っ込みを入れる。

「ほらぁ、ダメじゃない、佐々木部長にそんな言葉言わせちゃ」
 
「あ、うん…」
 
 本当に彼女はよく喋り、よく笑う、可愛い女の子だ…

「まあ、その、美咲ちゃん、あんまり杉山くんを苛めないで…」
 と、わたしは笑いながら言う。

「きゃぁ、佐々木部長に美咲ちゃんって呼ばれたぁ」
 本当に可愛いい…




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