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シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 8 ミステリアスな律子

「うん、い、いや、いい、今夜直接、山崎専務に訊くわ…」

 多分、その方が分かり易いであろう…

「はい、そうかもですね」
 美しい笑顔でそう言ってくる。

「とにかく、ちゃんとした、正式な秘書ですので…」

 これからよろしくお願いします…
 と、律子はそう言って…
 私の手を握ってきたのである。

「あ、ぁ、う、うん、よろしく頼むよ…」

「はい、全力を尽くします」
 美しい微笑みを浮かべ、そして、また真剣な目で、そうハッキリと言ってきた。

 そして私は改めて目の前にいる律子を見る…

 やや刈り上げた栗毛色のベリーショートなヘアスタイル…

 そんなベリーショートが故に、元々が八頭身の小さな頭が、更に小さく見える…
 
 そして均整の取れたプロポーションをダークグレーの膝丈のスーツで纏い、美しく、艶やかな光沢のストッキング脚を露わにしていた…

 確か、田舎の元カノのノンが…
 律子の事を『リッコ』という元モデルだと云っていた。

 そして…

 山崎専務を『山崎のおじさま』と呼び…
 確かに銀座のクラブ『ヘーラー』では山崎専務の事を直接呼んでいたのは記憶になかった。

 だから…
 不思議、いや、ものすごくミステリアスな存在に見えてきていた。

 初めて銀座のクラブで抱いた時は…

 某財閥系のお坊ちゃまと婚約寸前までいっていて、無理矢理破棄され、別れさせられ…
 その慰謝料代わりにあの天王洲アイルの超高級高層マンションの部屋を貰ったと云っていたと思うのだが。

 そしてその元彼にストーキングに近く追われ、困っていた…とも。

 なんだがそれらの話しが全てウソの様な…

 ホントなのか…

 考えれば考える程に混乱してきそうであった。



「うん、いいわ、山崎専務に直接訊くから…」
 と、私はもう一度繰り返し、呟く。

「うふ…」
 すると律子は笑ってきて…

「ごめんなさいね、だいぶ混乱させてしまっているみたいで…」

「あ、あぁ、うん…」
 少し恥ずかしくなってきてしまう。

「え…と、実は、もうお盆休みの前から決まっていたんですの」
 
「え、そ、そうなのか?」

「はい…」
 律子はにこやかに頷く。

「そ、そうなんだ…
 お盆休み前からか…」

 だから本社の総務に行った時に、秘書の話しを尋ねられたのか?…



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