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　69　準備室室長佐々木ゆかり(7)


「はい、ま、暫くはホテルステイでもいいかなぁって？」
　
「あっ」
　突然、美冴さんが何かを思い付いたかの様に声を出し…
「あ、あら、やだ…」
　そして恥ずかしそうに呟いた。
　
「え、美冴さんどうしたの？」
　思わず問いかける。

「え、あ…あ、あのぉ、ほら…」

「え、な、なに？」

「ほら、この前ゆかりさんが、一人で住むには広過ぎる…って云ってたのを思い出しちゃって…」

「あ…」
　確かに、美冴さんがお盆休み中にマンションに訪れ、あの夢の様な時間を過ごした時に…
『この３LDKのマンション一人じゃ広過ぎで…』
　『じゃぁ、わたし一緒に住んじゃおうかなぁ…』
　と、そんな会話を交わした。

「あ、そういうことか？」
　わたしがそう呟くと…
「あ、いや、一緒、そう思っただけで…」
　と、美冴さんが申し訳なさそうな顔をしながら呟いてくる。

「え、あ、そ、そうなんだ、お友達って、やっぱり…」
　すると健太がその会話を聞いて、そいか言ってきた。

「あ、うん、そうなの、この間はゆかりさんのマンションに泊まっていて…」

「あ、いや、そうなんですね、やっぱりお友達ってゆかり室長の事で…」
　と、健太はにこやかな笑みを浮かべて言ってくる。

「そうよ、美冴さんとわたしはお友達なんだから、変なヤキモチ妬かないの」
　
「え、あ、や、ヤキモチなんて…」

「ウソよ、美冴さんがわたしん家にいた三日間が行方不明で心配して、ヤキモチ妬いてたくせにぃ」
　と、ほぼ確信を持って言った。

「あ、いや、あ…」
　ズバリであったみたいだ。

「あら、やだ」
　と、伊藤さんと越前屋さんの二人はそんなわたして健太の会話を聞いて笑いを漏らす。

「うん、あの時、確かに美冴さんにそう言ったわぁ」
　そんな健太を放っておき、わたしは美冴さんの話しの続きをする。

「あ、いや、でも…
　一瞬、思っただけで…」
　美冴さんは口ごもる。

「ええ、でも、それアリかもぉ」
　だが、わたしは本気でそう思ってきていた。

「え？」
　美冴さんが少し驚いた顔をしてくる。

「そうよ、そうだわ伊藤さん…」
　そしてわたしはそう思い、伊藤さんに…
「そうよ伊藤さん、しばらくわたしのマンションに来る？」
　そう言う。

「えっ？」
　今度は伊藤さんが驚きの声を漏らす。