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シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 165 昂ぶる想い

「あ、伊藤さん…」

「はい、佐々木室長…」

 わたしは彼との電話を切って…
「今から大原常務が来社しますから、面接しますね」
 そう告げる。

 さっき言葉を、電話で話せたから、少し心が昂ぶっていた…

 よかったわ…

 昨夜、突然、呼び出し中に電源が切れ、そして切れたままであったから…
 そんな不安がようやく解消できた。

 やっぱり山崎専務達と悪巧みの最中だったんだわ…

 あのイケイケ派閥は今度はとんな悪巧みを企てているのか?…
 ある意味、わたしはワクワクしてきていた。

 だって、その悪巧みは…
 わたしと彼との更なる高見へと通じる部分があるから。

「ええ、今からですかぁ」
 そんな想いを伊藤敦子さんの声が破ってきた。

「あっ、うん、もう少しでこっちに来るそうよ」

 そして彼女の顔を見るなり、昨夜のあの一人慰みの…
 あの昂ぶりの瞬間の想いが浮かんでしまい、少しドキドキしてしまう。

「あぁ、なんかドキドキしちゃいます」

 すると脇から…

「大丈夫よ、大原常務は優しいから…」
 と、蒼井美冴さんが言ってきた。

 あ…

 ドキドキ…

 わたしはそんな美冴さんのあのハスキーな声と、甘いムスクの微かな香りを感じ…
 また、更に、ドキドキと昂ぶってきてしまう。

 なぜならば…

 まさに美冴さんはリアルな…

 禁断の甘い相手であったから。

 ヤバい…

 まるでわたしはビアンみたい…

 あぁ、でも…

 わたしは…

 わたしは彼が…

 愛しい彼…

 大原浩一常務に会えば…

 顔を見れば…

 落ち着くはずよ…

「だ、大丈夫よ、そう、美冴さんの言う通り…
 それにあくまでカタチだけだからね」
 努めて冷静を装って、わたしはそう言う。

 いや、自分に言い聞かせたのだ…
 






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