テキストサイズ

シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 171 心の騒めき

「伊藤さん、すごい美人さんでしょう?」

「あ、うん、そうだなぁ…
 ここはいたずらに美人が多すぎるな」
 そう返す。

「うふ、ま、そうかもですね…
 あ、そうそう、わたし彼女に暫くお部屋を゙貸しますから」

「え?」
 すると、突然ゆかりがそういってきたのだ。

「部屋を貸すって?」

「はい、ま、ルームシェアですね…
 実は…」
 そしてゆかりは、そのルームシェアに至る経緯を話してきた。
 (1747P〜参照)

「そ、そうなんだ…」
 私はその簡単な経緯の話しを聞いてそう返す。

「ほら、元々部屋を持て余していたし…
 それに常務とはいつものアソコが殆どだし…」

 いつものアソコ…
 それはいつもの逢瀬のホテルを指す。

「あ、うむ、ま、そ、そうだなぁ」
 突然、ゆかりからそんな逢瀬の話しが出てきたので…
 少し罪悪感が過ってきた。

「最近はアレですけどね…」

 最近はアレ…
 つまりは最近はそのホテルを゙使っていない。

 最後に使ったのは、もう約一ヶ月前くらいになる…

「だから、影響無いし、いいかなぁって」
 と、にこやかに話してきた。

「あ、ま、そうか…」

「それに、寂しい夜も寂しくなくなるかなぁって…」

「えっ、あ、う、うむ…」
 そして最後にしっかりと嫌味を刺されてしまった。

「あ、いや、す、すまない」
 罪悪感が更に湧いてくる。

「いえ、そんな意味では無いですわ…
 それに常務になられたから、なにかともっとお忙しいでしょうから…」

 更に、ズキッ、ズキッと嫌味が…

「あ…う…」

 返す言葉が無い…

「ま、冗談はさておき…あとは例の…」
 と、ゆかりは新規業務案件である、例のアウトバウンド系の事業の進捗状況の話しをしてくる。

 この新規業務案件もまた、ゆかりの高評価…
 つまりはお飾りでは無い、部長という出世への証明、後押しとなる大きな実績といえた。

 そしてそれは…

 二人の更なる高見への礎ともなるのだ。

 私の心に…

 少しだけ…

 そう少しだけ…

 野心という騒めきの昂ぶりが湧いてきていた。

 この佐々木ゆかり…

 そして松下律子…

 この二人がいれば…

 無敵の様な気がしてきていた。


 
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ