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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 75 敦子の想い(12)

『はぁぁ、ふうぅ』
 わたしはトイレの洗面台の鏡の自分を見ながら、そう吐息を漏らす…
 そして、心が高鳴り、昂ぶり、疼いていた。

 ガチャ…

 すると…

『あらぁ』

『あっ…』
 なんと、まゆみサマが女子トイレのドアを開け、はいってきたのである。

 そして…
『うふ、こんなところに逃げてきたのね』
 と、そのままわたしに近づき、そしてその美しい顔を寄せて囁いてきたのだ。

『え、あ、逃げ…てなんか……』
 わたしは慌てて言い繕う。

『あらぁそうかなぁ…
 わたしが後ろから抱く様に腰を押し付けながら踊ったから、ビックリしちゃってぇ…
 逃げちゃったのかとぉ、思ったのよぉ…』
 彼女はそう囁きながら、わたしの肩を抱き寄せ、そして…
『あ…』
 なんと…

『かわいいわねぇ』
 そう囁きながら、キスをしてきたのである。

『ん…』
 わたしはその不意のキスに震えながらも、首を振って、逃げる…
 いや…
 逃げる素振りをしたのだ。

 そう、逃げる素振り…

 実はわたしはそのまゆみサマの不意のキスに…
 一気に心を震わせ、蕩かせ、揺らがせてしまったのである。

 そして内心、その心の揺らぎの意味をも一瞬にして自覚してしまった、いや、理解をしてしまったからこそ、必死に抗い、唇から逃げる素振りをしたのであった。

 だが…
 それはあくまでも素振りであったから…
 本気で逃げようとした訳ではなかったから…

 とても抗う力は入らずに…

『うふ…かわいいわね…』

 わたしのその心の思い、想いをまゆみサマに一瞬にして見抜かれてしまったようであったのだ…
 
『あ、ん、や…』
 だけどわたしはまだ、必死に抗う、いや、フリを続ける。

 なぜなら…
 この心の震え、蕩ける想い、そして揺らぎに戸惑って、ううん、こんな感情はあのゆかりお姫さまにしか、いいや、ゆかりお姫さまに対して以上の感情の激しい揺らぎを自覚してしまっていたからこの戸惑いの揺らぎの想いの意味を理解できずに…

 いや、本当は分かっていた…

 ただ、一瞬にして彼女、まゆみサマに心が魅了、魅かれ、惹かれた自分の心に戸惑い、迷い、そして抵抗をしたかったのだ。

 だって、いやなぜなら、ゆかりお姫さまというわたしにとってのかけがいの無い存在が居なくなった途端だったから…




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