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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 87 敦子の想い(24)

 わたしの指戯による絶頂感に寝落ちしているあの憧れであり、永遠の憧憬の存在と諦めていたあの『ゆかり姫』の肩に手を触れ、そして見つめながらわたしは過去の…
 いや、わたし伊藤敦子という存在を創った忘れ得る事の出来ない『まゆみサマ』との青春の日々の…

 あの悲しい別れを想い返していく。

 まゆみサマはあの初めての夜から僅か一ヶ月もしない9月半ばに、なんと電光石火の早わざで、職場と住まいのマンションをわたしの住む横浜市内に変え、引っ越しをしてきたのであった。

『あっこちゃんと少しでも一緒に居たいからね』
 彼女は微笑みながらそう云った。

 そして…
『歯科医師なんていくらでも職場は選べるからさぁ…』
 まゆみサマは歯科医師でも矯正や美容整形系の医師であったらしく…
『そっちの方がお給料が破格なのよ』
 とも云っていた。

 マンションもみなとみらいが見渡せる様な一等地の高層マンションを賃貸し、わたしはもうそれだけでも心を蕩かせてしまったくらいであったのである…
 そしてそのマンションはわたしの家と高校の中間地点に立地していて、二人の逢瀬はより親密に、頻繁になっていく。

 平日は高校に通い、放課後に塾に行き、その帰りにまゆみサマのマンションに寄って食事を共にし、愛され、そして午後11時前後には帰宅をする…
 また週末や休祭日には親にはバイトてと称して、用事さえなければほぼ一日中一緒に朝から夜迄過ごしたり、ちょっとした旅行に出掛けたりと、まるで恋人同士の様に、いいや、恋人以上みたいな関係を過ごしていた。

 わたしはそのくらいまゆみサマに大切に愛され、そしてわたしも夢中になっていたし…
 ううん、彼女が全てくらいな想いで毎日を過ごしていったのである。

『ちゃんと勉強はしてね…』

『しっかり自分の夢を持ってね』

『わたしはわたし、そしてあっこちゃんはあっこちゃんの人生があるんだからね…』
 それらの言葉を、まゆみサマの口癖みたいにわたしの心に囁き、染み込ませてくれていた。

 だからわたし自身もまゆみサマという恋人以上の存在を享受しながらも、決して愛だけに染まったり、流されたりはせずに、いや、まゆみサマみたいな凛として美しく、自立した女性になりたいと…
 ちゃんと将来を見据え、決して勉強を疎かにはしなかったのである。




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