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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 88 敦子の想い(25)

 わたしはそんなまゆみサマみたいな凛として美しく、自立した女性になりたいと…
 ちゃんと将来を見据え、決して勉強は疎かにはしなかったのである。

 いや、本当は彼女みたいな医師になりたいとさえ憧れ、切望をしたのだが…
 さすがに医学部に進学する程の学力は無かったから、その憧れ、想いは適わなかった、いや違う、断念したのだ。

『そんなぁ、見た目ほど医者は楽じゃないわよぉ』
 そんなわたしの想いを察知したまゆみサマは優しくそう言ってくれる。

『わたしの家系が元々医者家系なのよ…
 でもね、わたしが美容整形系の医者になったのは親は怒ってるのよねぇ…』

『わたしはさぁ、そんな医者より、自立したバリバリのキャリアウーマンに憧れたけどなぁ…』
 そんな優しいまゆみサマのフォローの言葉に励まされ、救われて…
 だからわたしはビジネス系のエリートキャリアウーマンを目指す事にしたのであった。

 だから、高校生当時のわたしは…
 まゆみサマとの大人の、本気の、ホンモノのビアンの愛に溺れる事なく、勉強もしっかりやれた、いや、やったのだ。

 そしてそんなまゆみサマの愛に包まれながら順調に高校生活を送り、そして…
 なんとか一流と呼ばれる大学の商学部に入れたのであった。

『凄いわねぇ、合格おめでとう』
 この大学入学と同時にわたしとまゆみサマは一緒に都内に引っ越して住もうと、そんな予定を立てていて、また、それと同時に彼女は再び職場を都内に帰るつもりに計画をしたのだが…
 高校卒業間近の冬の2月末にわたし達の関係に変化が起きたのである。

 いや、本当は、ううん、今になってよぉく思い返すと…
 その兆候はわたしの高校3年の春先位から思い当たる事があった。

 その頃からまゆみサマはカラダの不調をたまに訴える様になってきていて…
 少しずつ痩せてきた様な感じになっていたのだが、本当にあの頃はまだまだわたしら何も知らない、世間知らずのガキであったし、周りや身内にもそんな経験が無かったから、全く分からなかったのだ。

 そう…

 まゆみサマは乳癌に罹患していたのである。

 どうやら本人曰く、更に半年位前から胸のシコリや、リンパの腫れ等の、少しながら自覚症状があったらしいのだ…

『医者の不養生ってヤツよね…』

 まゆみサマはわたしにそう笑って話した…

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