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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 91 敦子の想い(28)

『あのね…
 もう、まゆみさんとはね…
 終わりにしていただける、いや、終わりにしてくださるかしら』

『えっ』

『貴女は…あ、もう大学生なんだし、わかるでしょう?』

『え…』

『家はね、代々が医者の家系なの』

『は、はぁ』
 それはまゆみサマから何度も聞いて知っている。

『それなのに…もお、本当に医者の不養生って…』
 本当に呆れ顔で、そう呟く。

『え…』

『もお自分でも分かっていたはずなのに、あんな放ってしまって…』

『え?』
 心がザワザワと騒ついてきた。

『自分でも分かっていたはずなのに…
 もう…はぁぁ…』
 そして母親は本当に呆れた顔をしながら、わたしを見てくる。

 あ、え?…

 ま、まさか…

 そ、そうなのか?…

 そして目の前の母親は、そんな騒めいたわたしの表情を読んだのだろう…

『はぁぁ…
 もうリンパや肺にも転移していて…
 手の施し様の無いほどの手遅れなのよ…
 貴女は気付かなかったの?』

 そう云ってきた母親の表情は心配ではなく…
 呆れ顔であったのだ。

『え…あ…は、はい…』

 そう、わたしは本当に、全く、気付かなかったのであった…

『あの感じだと、かなり以前から自覚症状はあったはずなのよねぇ…
 あ、わたしも一応医者ですから…』

『あ………』
 
 わたしは…

 わたしは…

 あんなにほぼ…

 毎日の様に一緒に過ごしてきていたのに…

『あ……は、はい……き、気付きませんでした…』

 ザワザワザワザワ…
 心が激しく騒つき、波打ってきた。

『ほ、ほら、ま、あ、あの、貴女とまゆみさんはそんな関係なんでしょう?
 胸や脇のシコリなんかには気付かなかったの?』

『あ、は、はい…』
 あんなに抱かれ、いや、愛されていたのに…
 わたしはまゆみサマの変化には全く気付かなかったのだ。

『そう、ふぅぅ…』
 母親は呆れた様な、そんなため息をついた。

『ま、仕方ないわね…』

『………………』

 


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