テキストサイズ

シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 94 敦子の想い(31)

 迷宮の迷走…
 それはまずは、心の迷宮の彷徨いであった。

 高校生活のほぼ全ての時間、まゆみサマと共に歩み、愛され、いや、全てといえる蜜月な関係であったのが、彼女のガンの罹患という現実の衝撃と共に、母親により関係を強制終了させられ…
 そして春先からは都内で一緒に住もうとまでの計画をしていた事への心の空虚感。

 そして母親から訊いた、もう手遅れ、もって3ヶ月から半年という余命宣告の事実の重さ…
 最後に顔を、言葉を交わした時には余り話せなかった喪失感。

『しっかり勉強して、自立したいい女に、カッコよいキャリアウーマンになってね…』
 という言葉に、ギリギリ支えられ、かろうじて大学には通ってはいたが…
 今までのまゆみサマとの蜜月関係では無く、友達も居ない、一人という孤独感と絶望感。

 夏休みに入った瞬間に、それらの刹那的な思いにまゆみサマという青春の存在感の不在の大きさに打ち拉がれてしまい…
 そして…
 ハッと気づいた想いに激しく衝撃を受けてしまったのだ。

 それは…
 もう、まゆみサマは亡くなってしまっているのではないか…
 という事に。

 いや、まだ、あれから2ヶ月ちょっとだから、まだ存命している筈…
 だが、それさえ分かり様もないこの現実の絶望感。

 心が叫び、悲鳴を上げる…
 そしてもう一つの迷走であるカラダの疼き。

 あの初めて出会った夜から女の…
 女同士の…
 ビアンの深く、激しい快感の愛を与えてもらい、いや、あれから4年間も定期的に、そして蜜に、愛し、愛され、抱き、抱かれてきたカラダに染み付いた深い特有な快感が…
 まるで麻薬の禁断症状の如くに、若いわたしのカラダを疼かせてきて…
 いや、狂わせてきたのだ。

 その愛の狂気の切望の欲求が、もうまゆみサマとは二度と会えない、逢えない、抱かれない、愛されないという刹那的な絶望感に更に拍車を掛けて…
 余計にわたしを狂わせてくる。

 そしてその愛の狂気が…
 わたしを夜の巷へと迷走させ、彷徨わせてきたのであった。

 わたしは夜毎、夜の街に彷徨っていったのだ…



ストーリーメニュー

TOPTOPへ