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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 123 朝の会話

「おはよう」  
 まずわたしは『新規プロジェクト準備室』へと顔を出した。

「あ、佐々木室長おはようございます」
「ゆかり室長おはようございます」
 まずは越前屋さんが明るく挨拶を返してきて、そして蒼井美冴さんがわたしの顔を見ながら返してきた。

 そして…
「ゆかり室長、昨夜はごちそうさまでした」
 美冴さんが続けてそう言ってくる。

「あ、そんなこと…」
 そう、昨夜は伊藤敦子さんをマンションに案内する前に軽く夕食代わりに食事を済ませようと会社ビル前のビストロに寄ったら、美冴さんと武石健太との二人と偶然、居合わせたのだ。

 すると美冴さんが続けて…
「伊藤さんとの初めての夜はどうでした?」
 と、訊いてきたのである。

「えっ、あっ」

 美冴さんのその問いかけは本当に深い意味等なく、そうそれは…
『初めてのルームシェアだからどうだったのか?…』
 という、本当に気楽な、何の深い意味も無い、何気ない問いかけであったのだ。

 だがわたしは、昨夜の淫靡な抱擁と、今朝のタクシー内での無言の接触の心の激しい揺らぎのせいもあって… 
「あ、う、うん…あ、別に、なんてことない…
 あ、うん、そ、そう…」
 少し変な、いや、モロに動揺した様な声音と表情をしてしまっての返事をしてしまったのである。

 そしてそんな不惑な反応は…
「えっ?」
 繊細で敏感な美冴さんにはかなりの挙動不審な返事となってしまい…
 複雑な目で見つめられてしまう事となってしまった。

 いや、恐らくはそんなわたしの不惑な反応に全てを見透かされてしまったかもしれない…
 ドキドキドキドキ…
 と、一気心が揺らぎ初めてしまったのである。

 あ、や、やばい、み、美冴さんなら勘づいて分かってしまうかも…
 そしてそれは、先のお盆休み中に不惑で禁断な流れのせいにより甘美に結ばれてしまい、心とカラダを融ろかせてしまった相手であるからこそでもあった。

「…………」
 美冴さんはわたしを黙って見つめてくる。

 あぁ、やばいわ…
 だが、今のわたしには取り繕うリアクションが、言葉が出てこない。

 すると…
「もぉゆかり室長のマンション、チョーヤバかったですぅ」
 と、恐らくは直ぐ傍でわたしと美冴さんの様子を見ていたであろう敦子がすかさず機転を利かし、そう割って入ってきてくれた。



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