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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 125 越前屋の存在

「じゃあ特別に今夜越前屋さんを招待してあげるから…」
 わたしがそう言うと…
「えっ、ゆかり室長っ、ホントですかっ?」
 嬉しそうにそう反応してきた。

「うん、仕方ないからいいわよ、おいでよ」
 笑いながらそう言う。

「うわぁ、やったぁ…」
 この越前屋さんは本当に明るい、そしてこの明るさにわたしは何度も救われていた。

 そう、救われている…
 そして今夜も越前屋さんの存在に救われる。

 なぜなら、彼女の来宅が、わたしと敦子のストッパーになるはずだから…

「えぇ、えつが来るのぉ?」
 すると敦子がワザとそう言ってきた。

「もうあっちん、そんなこと言わないでよぉ」
「せっかくぅ、ゆかり室長さんの所でさぁ、静かな夜を過ごせるのにぃ」
「もぉ、そんなぁ、あっちん意地悪言わないでよぉ…」
 と、二人はそんな会話を交わしていくのだが…
 敦子のそんな言葉は半分以上は本音であろうと思われる。

 そして、それは、わたしの想いも伝わった意味も読みとった筈だから…

 そうわたしが越前屋さんを、いや、敢えて越前屋さんを誘った…
 つまりは今夜は二人きりにはならない、彼女の存在感がいい緩衝材になり、ううん、そしてそれがわたしの意思だと思っているはずだから。

「さぁそういうことで、お仕事ね」
 わたしは切り替えの意味もあってそう声を掛け、そしてメンバー各々に指示を出していく。

「…それでお願いしますね、わたしは今からコールセンター部に行きますから」
 と、そう言って…
 武石健太…
 越前屋朋美…
 伊藤敦子…
 等の総合職のメンバーに声を掛け、出掛け際にチラと蒼井美冴さんの顔を見る。

 あ…

 すると美冴さんもわたしの顔をさり気なく見てきたのだ。

 やっぱり美冴さんにはお見通しみたい、いや、全てを見抜かれちゃうみたいだわ…

 やはり美冴さんには隠せないのかもしれないな…
 わたしらそんなことを思いながらコールセンター部のデスクに向かう。

 今日からは『新規業務案件』に於いての会議とマニュアル作成が始まるのだ…
 まだまだ準備段階の『新プロジェクト』よりもいよいよ具体的な内容が決まったこの『コールセンター部新規業務』がかなり多忙になってくる。

 わたしは本当にかなり忙しくなるのだ…
 だが今朝に限ってはこの多忙さに救われた。


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