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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 128 絡まる…

「うんそうよね、まさかねぇ、この時期に出来るなんてわたしも考えてもいなかったわぁ…」

 そうなのだ…

 始めての『ネット型生命保険』という今回のこの新規プロジェクトに於いて、この『申し込みシステムプログラム』という存在が最大の課題であり、大きな壁のひとつでもあるから、本当にこの時期での例えプロトタイプの雛形プログラムとはいえ、この完成は快挙に近い事なのである。

「でもまあ、これは美冴さんが持っていた例のプログラムがあったおかげでもあるはずだから…」
 そう、それはSEの中島彩美本人が云っていた事でもある…
 美冴さんのプログラムの中に画期的なクラウド型のプロトタイプが仕組まれているから、それを利用し融合すれば一番面倒な部分が省けるのだと。

「え、そんなぁ…
 ただ、あの当時は、あの頃は、まだ時期尚早って云われててぇ…」
 と、美冴さんは恥ずかしそうに言ってくる。

「じゃ、時代が追いついてきたって事ですねぇ…」
 と、越前屋さんがいつも以上の明るさで言ってきた。

 本当に彼女の明るさは場を和ませてくれる…

「ま、そういう事ね…
 何にしても楽しみだわ、早くそのプロトタイプを見たいわぁ」
 わたしはそんな昂ぶる想いを口にする。

 そしてタクシーはスムーズに首都高速に乗り入れていく…

「でもぉ、さすがぁ中島さんだわぁ…」
 と、越前屋さんは独り言の様に呟いた。

 確か彼女は、自分から大原常務、いや、当時はまだ本部長に自らの存在感と価値を売り込んできた逸材だと聞いた…
 と、わたしはそんな事を考えながら、走り過ぎて行く車窓の風景を眺めていた時であった。

 あっ、えっ?…

 突然、左隣りに座っている美冴さんの手が…
 わたしの左手に触れて、いや、指先を絡ませてきたのである。

「…………っ」
 わたしは無言で首を振り美冴さんを見る。

「……………」
 
 すると美冴さんは、少しだけ斜めにわたしの方を向き…

 そして黙って見つめてきたのだ…

 あっ、み、美冴さん…

 わたしは思わず美冴さんの目を見つめ返し…

 そしてその触れてきている指先に、自らの指先を絡めていく…

 その絡まる指先はまるで、今朝の敦子が絡めてきた仕草と同じ…

 んっ…
 そしてまた美冴さんのスカートから伸びた艶やかな光沢の美しいストッキング脚が…

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