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シャイニーストッキング

第13章 もつれるストッキング2     佐々木ゆかり

 134 美冴さんの想い

 だって…
 わたしだって…
 本当は、いや、本当に美冴さんのことが好き、ううん、愛しているかも…
 そう想い、そんな心を込めて美冴さんのことを見つめる。

 するとその想いが伝わったのか…
「それなのに、伊藤さんとなんて…と思ってつい悪戯しちゃったの」
 と、美冴さんは小さな声で、そしてボソッと呟いたのだ。

「え、あ…」
 そんな呟きにまたズキンと心に罪悪感が疼く。

「でもこれから大丈夫なの?」
 そして美冴さんが続けて訊いてくる。

「え、あ、う、うん、そ、それは…」

 そう、それは…
 これから一緒にルームシェアで住むのに彼女とそんな関係になっちゃって大丈夫なのか?…
 それはわたしにも分からないこと…
 今朝はまだ、そんなことを考える余裕もなかったし…

「あ…う、うん」
 そんな想いを話そうと思った時であった…

「あ、あぁん、もおぉ、二人でぇなに後ろでぇ、コソコソお話ししてるんですかぁ?
 もう着きますよぉ」
 と、わたしと美冴さんの間に越前屋さんが入ってきたのだ。

「えっ、もう着いちゃうの?」
 その瞬間、わたしと美冴さんは我に還った。

「はい、もう新橋駅前ですよぉ」
 どうやら予想以上に首都高が空いていて、早目に到着するようであった。

 そしてわたし達、越前屋朋美、蒼井美冴さんの3人は…
『○△生命保険株式会社本社ビル』を訪れる。

「うわぁ、大きなビルだわぁ」
 そう呟いてきた美冴さんの脳裏からは、恐らく、さっきまでのタクシー内でのわたしとの遣り取りはすっかり消えてしまった感じであった。

 だけどわたしの脳裏の、いや、心の中では、まだ、ザワザワと美冴さんとの遣り取りが、そして心の揺らぎと昂ぶってしまった疼きの余韻が尾を引いていたのだ。

 でも、今は仕事中である、頭を、思考を切り替えなくてはいけない…

「さあ行きましょうか…」
 わたしはそんな自分に言い利かせる意味でも、そう呟き、そしてその本社ビルへと入っていく。

 実は、この来社は、わたしも初めてであった…

 そして、この後…

 絡まりつつあったわたしの心は…

 更に絡まり、いや、複雑に絡まりもつれていくこととなっていく…

 第13章 もつれるストッキング2
     佐々木ゆかり

        完

 
 

     

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