テキストサイズ

シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 1 1997年8月19日火曜日午前11時…

「………こんな感じです」
 朝から面接の後コールセンター部に於いての新規業務案件の進捗状況をゆかりが説明してきた。

「うん、予想よりもかなり順調じゃないか…
 それに単価が遥かに高いなぁ」
「はい、それは本当に杉山くんのお父様のお陰で…」
 「あれか、バカ息子の為に…か?」
「はい、そうみたいで本当に助かってます」
「でも他のテレビ局は?」
「なんか大丈夫みたいで…
 あ、今日、午後イチで正式契約してきます」
「そうかぁそれは良かった…
 いやすごい大成果だなぁ、これでキミの部長と準備室室長も万全だな」
「まあ、そうかもしれませんが…」

「うん、だが、その反面…」
 そして私はひと呼吸間を開けると…

「もっと敵も増えるかなぁって…」
 と、ゆかりはそう呟き、そして苦笑い、いや、余裕の笑みなのかもしれない…
 を、浮かべてきた。

「いや、それが分かってるならば大丈夫だよ…
 それに…」
 そう私が言い掛けると…

「はい、アナタ、あ、いや、大原常務がいますもんね」
 満面の笑顔で言ってくる。

 そう、バックには私がいるのだ…
 それはつまり本社主流派閥の山崎専務が控えているという事…

 それにもっと万全な、日本経済界の血脈も…
 いや秘密兵器的な…
 それもかなりの破壊力がある存在が…

「あ、うん、そうだな、大丈夫だよ」
 だが、さすがにゆかりには律子の、いや、秘書の松下律子の存在感だけは…
 絶対に言えない。

「よし、後は、今度は、私だ…」
「え?…」
「いや、この新規プロジェクトと並行して…
 秘かにあの○△生命を立て直してやろうかなってさ…」
「あ、だから越前屋さんなんだ…」
「あぁ、うん、そう、彼女の人脈をさ…」

 それに…
 律子がいる…
 そう、絶対に秘密の…
 秘密の最終兵器の律子がいるから…

「もしも新規プロジェクトと、そちらの立て直しも成功したら…」
 するとゆかりはそんな私の想い、いや、ヤル気満々の思いの目に気付いたのだろう…
 少し昂ぶった声音でそう問うてきたのだ。

「うん…ヤバいぞ…」
 そして私は力強い言葉、声音でそう言い切った。


 私はこの日から…
 いや、この時から…

 心の中に完全に、熱い野心、野望という芽が…
 芽吹いたのを自覚したのだ。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ