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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 2 ゆかりの敏感さ

「うん…ヤバいぞ…」
 そして私は力強い言葉、声音でそう言い切った。

 私はこの日から…
 いや、この時、この瞬間から…

 心の中に完全に、熱い野心、野望という芽が…
 芽吹いたのを自覚したのだ。

 なぜならば、片腕にはこの優秀な佐々木ゆかりという素晴らしいパートナーであり、最愛の女性が存在し…
 そしてもう片腕には新たに、最強の、そして日本経済界の熱い血脈である松下律子という最終兵器的が存在するから。

 そして…
 それを足場にして地盤さえ固めてしまえば…

 私は天下無敵に、いや違う…

 一気に下剋上を成し得られる可能性が見えてきたからである…
 私の野心という想いがこの瞬間から、熱くたぎり、沸き立ち始めたのである。

 だが反面…
 私自身、そんなこの想いに対して違和感も感じてはいた、いや…
 こんな野心的な昂ぶる想い、思いなんて、あの離婚と一緒にとうの昔に萎んでしまった筈だと思っていたから。

 そしてそんな私の微かな不惑の感情の揺らぎを、さすがのゆかりは敏感に察知したらしく…

「ん、どうかしたか?」
 ほんの一瞬なのだが、怪訝な目を向けてきたのである。

 さすがゆかりだ…
 ほんの些細な私の感情の揺らぎや昂ぶりにも敏感に察知、反応してくる、いや、してくれる。

 いいや、それ程に私はゆかりに愛されているという事なんだ…
 すると脳裏には、昨夜の律子との逢瀬の情交が想い浮かび上がり、ズキンと罪悪感が湧いてきてしまう。

「え、いや…
 あ、そうなりたいですね」
 だから、そう返してきたゆかりに対して…

「あぁ、そうだなぁ…」
 と、慌てて、いや、私的には精一杯、落ち着きを装ったつもりでそう応えたのだ。

「……は、はい…あ…」
 またゆかりはそんなヘタな私のリアクションに一瞬、怪訝な目をしてくる…




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