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3　ゆかりの変化
　
「……は、はい…あ…」
　またゆかりはそんなヘタな私のリアクションに一瞬、怪訝な目をしてきた。

　「じゃあ私は向こうに行くから…
　午後からは予定が詰まってるんだ…」
　だから私はヤバいと思い、咄嗟に…　そう言い繕う。

「あ、はい、わざわざありがとうございました」
　すると意外にもこの咄嗟の言葉が上手く言えたのか、ゆかりはすんなりとそう応えてくれたのである。

　おっ、なんか上手く言えたのか？

　そこで私は更に言い繕うつもりで…
「あ、うん、本当にどっちの部署にも優秀な人材が集まっているなぁ」
　と、笑みを浮かべながらと、さっき二人を面接した際に内心、本当に感じた思いを呟き…

「本当ならランチでも誘いたいところなんだが…」
　と、調子よく言った、いや、言えたのだ。

　どうやら少しはウソが…
　誤魔化しが…
　上手くなったみたいである。
　
　するとゆかりは…
「あ、いえ、わたしもこの後すぐに赤坂と東京タワーのテレビ局に行かなくちゃならないですから…」
　と、すぐにそう応えてきた。

　そしてそう呟くゆかりの表情が…
『本当は行きたい…』みたいに見えたのである。

　おっ、上手く言えたみたいだ…

　今までの私は嘘や言い訳が本当にヘタらしく、いや、下手であり、直ぐゆかりに見抜かれていたのだが、今回は上手く繕えたみたいであった。

　それにきっとゆかりの本音は、ゆっくりとランチがしたい…
　その想いは間違いはないであろうと、私には感じる、いや、分かる。

　その想いだけは間違いなく分かるのだ…
　そしてゆかりはここ最近は本当に可愛らしく、かわいい女になったのだ。

『鉄の女』
　一時期、このコールセンター部の派遣スタッフの女子の間内でそう呼ばれていたのは、さすがの私でも知っていた。
　しかし最近はこんなに可愛らしく、そしてよく笑みを浮かべる様になってきたのを凄く感じ、いや、実感できている。

『彼女が変わったのは大原くんの愛情のお陰よね』
　と、ついこの前、同期でもある笠原響子コールセンター部主任から云われた。

　それはそれで嬉しく思う…

　だが、この社内では、誰が見ているか分からないからこの関係がバレる訳にはいかないのである。