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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

11 他の二人

「………はい、わかりました、では後ほど、失礼します…」
 私は林田社長の処に午後四時過ぎに訪れる約束をした。

「はい、四時過ぎですね」
 それに秘書の律子が反応する。

 実質、この『○△生命保険』は我が『○○商事株式会社』により吸収合併され完全子会社化したから、その本社の本部長であり、元々の出向役員からの常務就任である私の方が裏を返せば立場が上になるのである…
 だが、本質的な私の常務は本社の松本副社長派閥からの『傀儡常務』である訳だし、元々体育会系出身の私には、年上の方に対しては横柄な態度は取れ無いし、取るつもりもなかった。

「その考えは素敵ですわ…」
 と、秘書であり、私の秘密の後見人でもある律子は、そんな私の考えをいつもそう言って褒めてくれる…
 いや、佐々木ゆかりもだ。

 そしてそんな私の考え、気質は…
『むやみに敵を作らない』という思いにも通ずるのである。

「え…とぉ、残りの二人は、甲府支社な行ったぁ、元、人事部長の井坂さんとぉ…
 仙台支社の元、コンプライアンス、リスクマネジメント部課長だった山本さんですかねぇ」
 と、越前屋は、私が電話を切ったタイミングを見計らってそう告げてきた。

「甲府支社の井坂さんは当時の元常務の独裁的な人事異動辞令にいち早く気付き、反旗を翻した気骨のある方でぇ、今は甲府支社の副支社長ですぅ…
 そしてぇ仙台支社の山本さんは、やはりぃ女性社員等の不等な扱いに異議を唱えてくれてぇ、林田さんとほぼ同時期に飛ばされましたぁ…」

「えっ」
 すると越前屋の言葉を聞き、珍しく律子はそんな不快な反応をしてきた。

「いや、そうなのか?
 本当に酷い独裁人事異動だなぁ」
 と、私も不快な思いをする。

「はい、そしてぇわたしが当時さり気なくぅ、なぜそんな各地方支社に振り分けたのか調べてみたら…
 入れ替えだったんですぅ」

「入れ替えって?」
 私は問う。

「あ、はい、つまりはその各支社に飛ばして、入れ替えに自分の都合の良い人材を本社に呼び入れる…という感じでしたぁ」

「うわ、そ、そうなのか」

「はい、ちなみにぃ、その前常務のセレクト基準は恐らくぅ、出身大学なんですよ…
 つまりその入れ替えで招集した人材全員が、前常務と同じ大学、つまり後輩に当たるんですぅ」



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