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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

37 誉め言葉

「わ、わたし…だけなんだぁ…」
 律子は本当に嬉しそうに呟いた。

 だから私は…
「そうだよ、キミ、律子だけさ」
 と、呟き返した。

「うわぁ、何か嬉しいです」
 そして律子は本当に嬉しそうに、満面の笑顔を浮かべてくる。

 ドキン…
 私はその律子の笑顔を見て心が高鳴り、いや、ときめいてしまった。

 うわ、なんて笑みなんだ…
 その笑みはこっちまでがなんとなく嬉しくなってしまうような幸せの笑顔といえる。

「はい、お待ちどうさまっス」
 すると料理が運ばれてきた。

「はい常務さんのエビピラフと、可愛い彼女のペスカトーレっス」
 オーナーの彼がそう言いながら料理を置く。

「あら、もう、マスターったら違いますよぉ…
 わたしは常務さんの秘書なんです、今夜は仕事帰りでぇ…」
 と、律子がまたまた嬉しそうに言い訳をする。

「あ、そうなんスか、秘書さんなんスかぁ…
 いやぁ、こんな可愛いくて美人さんの秘書さんなんて、常務さんが羨ましいなぁ」
 彼の人柄なのだろうか…
 そんな歯の浮くようなお世辞と云えるこの言葉が、全然嫌みには聞こえない。

 素直な誉め言葉に聞こえてくる…

「あぁ、そうだろう、本当に優秀で美人な秘書なんだよ」
 と、私もつい、彼の雰囲気に乗って、そんな言葉を言ってしまう、いや、言えたのだ。

「あぁ、もうお二人ともぉ、そんな歯の浮く様なお世辞なんて言わないでくださいよぉ」
 律子は恥ずかしそうに、そしてまた、嬉しそうに言ってくる。

 こんな感じの律子めた初めて見た…

 いや、こんな顔もするんだ?…

「あ、いや、お世辞じゃないっスよ、本当に常務さんが羨ましいなぁって…
 美冴さんだってスゲぇ美人さんだし、常務さんの周りには美人さんばっかりなんかなぁって…」

「うん、ま、確かに美冴くんも凄い美人だしなぁ」
 私は思わず呟いた。

「え、あ、あら、そうなんですか?」
 すると律子は少し、この私の言葉の声音の変化を敏感に察知したのか訊いてくる。

 本当に私の周りの女性達は皆、鋭い…

「あ、うん」

「もしかして、あの山崎のおじさま絡みの主任に引き上げた彼女?」

「うん、そう、そうだよ」

 本当に勘、カンが鋭い…




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