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シャイニーストッキング

第14章 もつれるストッキング3          常務取締役大原浩一

 192 狙い通り

「あと秘書課の竹下雪恵くんに於いても本社で進めている『新プロジェクト』への異動辞令をやはり早急に発令します」
 私はそう立て続けに告げた。

「えっ」
 それには永岡支社長が驚きの声を漏らし、また…
「ええっ」
 今日、急遽、竹下くんの代わりに控えている秘書の彼女もそんな驚きの声を漏らしてきたのだ。

 永岡支社長にはこの竹下くんに関しては完全に寝耳に水的な驚きといえ…
「え、あ、そ、それは?」
 と、動揺を露わにしてくる。

 そして、ナンバーワン秘書である竹下くんの代わりに控えているのだから、おそらくはナンバーツーであろう秘書の彼女は永岡支社長よりももっと驚きの表情を表してきた…
 それは彼女にとっては、いや、この新潟支社の秘書課に於いての青天の霹靂的な驚きとなり、この竹下くんの異動情報は瞬く間にこの新潟支社内中を走り抜け、いや、これが発信元となり全国の各支社へと拡散していくはずであろう。

 そしてそれは私の、いや、律子の狙い通りとなるはずなのである…

「この彼女の異動の意味は分かりますよね?」
 私は、そう続けて永岡支社長に攻めて、いや、責めていく。

「あ、は、は、はい…」
 永岡支社長は、目を泳がせ、冷や汗を流し、そして絶望的に声を震わせながら小さく応えてきた。

 そして彼の脳裏には絶望という二文字が浮かんでいるに違いない…

「もう真中常務はいないんですよ…
 アナタはそれを全く分かってはいない、いや、分かろうともしていないんでしょうね…」

 私は更に、ダメ押しの言葉を告げる…
 そしてこれは彼にとっては死刑宣告に等しい意味となる筈なのだ。

「もう諸々の辞令の手続きは朝イチで本社の、更にその先まで済ませてありますから…」
 その私の言葉に合わせて律子か頷く。

 そして『その先まで済ませてある…』
 それはつまりはこの生命保険会社を吸収合併し、完全子会社化とした…
『○○商事株式会社』のトップという事を指し、意味する。


「あ、それに、新潟支社の今後の大改革も必要と判断しましたから…」
 
 そのおつもりで……

 私は冷たく言い放つ。




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