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シャイニーストッキング

第2章 絡まるストッキング1

 34 可愛いい

「ええ、でも…抱かれたかったの…」
 そうゆかりは本音を呟き、私はゆかりの目をじぃっと見つめる。

「…いや、ゆかりは最近ホント可愛いくなってきたよなぁ…」
 これも私の本音である。
 最近、時折、可愛いくて堪らなくなる時があるのだ。

「ちょっと前迄はそんな感じじゃなかった様な…」
 まだ処どころに心にカドがあり、そして見えないバリアみたいものが心を覆っていた様に感じていたのである。

「ええ、そ、そうですかぁ」
 と、訊いてくるので私は
 ああ…
 と頷いたのである。

「堪らないよ、可愛いくなってきたよ…」
 この感じがいいよ…
 目でそう囁いたのだ。
 するとゆかりは、素直に嬉しそうな顔になっていくのである。

「それにたまにはいいじゃないか…」
 私はこの、しない、できない、というこの状況にホッとしている自分の様子を、ゆかりに悟られない様に必死なのだ。
 そして
たまにはこんな夜もいいだろう…
 という、もっともな顔をしていたのである。

 するとゆかりはしばらく逡巡し、そしてふと、笑みを漏らしたのだ。

「あ、今の笑みはなんかアレだなぁ」
 
「えっ、いや、そんな事はないですよ…」
 こんな会話も新鮮で楽しかったのである。

 時刻はあっという間に過ぎ、間もなく午後11時半になろうとしていた。
 
「明日も忙しいんだろう…」
 それにこのバーは零時で閉店なのだ。

「たまには早く帰るか…」
 私はそう言って会計を済ませ、ゆかりの肩を軽く抱き、私達はエレベーターに乗る。
 するとエレベーターはわたし達だけであったのだ、私はスッとゆかりを抱き寄せ、唇を寄せていく。

「あ…ん…」
 そのキスに心が蕩けてしまう程に震えてしまう。
 私はこの今のゆかりに対する想いを舌を絡め、注ぐ様に唇を貪っていくのだ。
 心が昂ぶるキスである。

 しかし残念な事に、エレベーターはあっという間に1階ロビーに到着してしまったのだ。

「あ……」
 私は仕方なく唇を離すのだ、だが本当はまだまだキスしていたかった。

「たまにはいいだろう、その代わり…」
 次に逢った時は燃えちゃうから…
 そう笑いながら耳元で囁いたのである。

「もお…」

 そう呟きながら、笑みを浮かべて私から離れたのだ…







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