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シャイニーストッキング

第7章 絡まるストッキング6 和哉と美冴2

 29 スッキリ

 今、心の中の時計が時を刻むのを止めた…

 僕の心の中の迷走が終わりを告げる。

 五年間の想いを遂げた…

 遂げられたのだ…

 この五年間は無駄ではなかった。


 この心の想いは、ある意味燃え尽き症候群に近い感じといえるのであろうか…

 なんとなく全てを語り尽くし、心がスッキリとした感じがあったのだ。

 だが、実際には殆ど語ったとは云えず、ただ、だだ、美冴さんの凜とした美しさに心震わせていただけのような感じもしていたのである。
 そして、冷静にあの五年間の関係を思い返してみても、美冴さんとの逢瀬は僅か二週間足らずであり、その半分以上が夢うつつな感覚でしかなかった。
 つまりは、あの美冴さんとの禁断の関係は、僅か二週間の夢の様なモノであったのだ、それ程に、実感が少なかったといえるのである。

 夢うつつ…

 夢虚ろ…

 そして夢幻の如く…

 と、いえるのだと思うのだ。

 そしてその夢幻は、あの突然の美冴さんの失踪的な事実により、更に脳内で、心の中で、美しい思い出の夢として、五年間膨らみ続けたのかもしれない…

 だから、例え、美冴さんの美しさに心を震わせていただけだとしても、今となってはこれで良い、良かったのだと思うのである。

「なんか、スッキリしました…
 いや、スッキリできましたか…」
 僕は軽やかにそう呟いたのだ。

「えっ、そうなのっ」
「はい…スッキリです…」
 そう言うと美冴さんは少し驚いた顔をする。

「スッキリ…したんだ…」
 そう呟いてきた。

「はい…
 この五年間に…
 この大学生活に…
 悔いや、後悔はありません…
 美冴さんを追い続けて良かったと思えましたし、会えて本当に良かったです…」
 僕は心からそう想い、そしてそう言葉に発したのだ。

「そ、そう…」
「は、はい、そうなんです…
 あの時のまま動き続けていた心の時計も止まったみたいです…」
「心の…時計…」
「はい、心の時計です…
 それも無事に止まったようなんです…」
 そうなのである、ザワザワとした心の騒めきが止まっていたのである。

 もう一度、美冴さんに会わなくては、再会しなけては…

 そして、失踪の理由を訊かなくてはこの心の騒めきが絶対に終わらない…

 そうこの五年間思っていたのだが、その思いをも遂げる事が出来たのだ。





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