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シャイニーストッキング

第7章 絡まるストッキング6 和哉と美冴2

 30 二つの事

 もうスッキリだ…

 心の時計も無事に止められたのだ。

「これで、明日へと、新しい時間を始める事が出来ると思います…」
 僕はしっかりと美冴さんの目を見つめてそう言ったのだ、いや、言えたのである。

「新しい時間…」
「は、はい、そうです…
 新しい時間です…」
 そう呟きながら、食後のアイスコーヒーを飲む。
 このコーヒーの苦さが心をスッキリとさせてくれたのかもしれなかった。

「今までは、この駒澤大学、この街、このファミレスに…
 しがみ付いて生活してきていました、だけど、明日からは大して生活リズムは変わらないけれど、心の持ちようが変わります…」

「うん…」
 美冴さんは僕を見つめてくる。

「もうこうして美冴さんとは再会できたのです…
 そしてスッキリできた…
 これからは、将来を見据えて一歩を踏み出していこうかなって…」
「将来…」
「はい、将来です…
 実は今夜は二つの事を美冴さんに訊こうと思っていたのです」
「えっ、二つの事…」

「はい、二つの事です…
 一つは、あの五年前から今に至る話しでした…
 そして…もう一つは……」
「うん、もう一つは…」
「訊こうというより、尋ねようかなって…」
「尋ねる…って?」
「はい、僕の将来の事です、いや、進路
の事なんです…」

「将来の進路って…」
 美冴さんはやや、驚いた顔をする。

「いや、普通に将来の進路の事です…」
 そうなのである、僕は、将来の進路についてずうっと悩んでいたのであった。
 そしてそれは、この夏休みが終わるまでに選択しなくてはならないのである。

「この駒澤大学に進学した…これは、ある意味、美冴さんのせい…
 いや、追い続けていた僕自身のせいなんですが、とりあえずそう言わせて下さい…」
「うん…」
 美冴さんは少し苦笑いを浮かべてくる。

 そしてこの五年間の思いを遂げての再会ができたのである…

 もう思いを遂げられてスッキリできた。
 そして一歩ずつ前に進める事が出来るのだ。

「でも、自分で決めかねているんです…」
「決めかねている……の…」
「はい…そうなんです…
 正直、かなり迷っています…」
 二者択一なんです…
 だから美冴さんに決めてもらいたいなって、昨夜、ふと、思ったんです…
「えっ、なぜに、わたしなの…」
「そ、それは、そ、そのぉ…」




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