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第4章 合宿

今日から卓球部の合宿が、二泊三日の予定で始まった。

1年生だった去年は、基礎体力作りと、先輩達の雑用、食事の準備等で終わった。

ただただ、キツかった感想しかない。

しかし、今年は主力として練習が出来る。僕の実力だと、団体戦は、おそらくシングルで出してもらえる可能性は低い。僕より強いやつは、何人かいる。僕は、ダブルスか補欠になる可能性が高い。

スレンダー美人の彼女、安田美鈴は、女子の中では、2、3、番手で僕と同じ立場かちょっと上くらいだ。調子によっては、シングル、ダブルス両方出る可能性もある。

僕は、3本のラケットにそれぞれ違うラバーを張り、調子によって変えるようにしていた。以前、その中の一本を安田が貸して欲しいと言い、貸したところ、

「このラケットとっても使い易い!」

と言い、ちょっと調子の悪いときとかに借りに来るようになっていた。そのラケットは、自分ではそんなに使わなかったので、いつでも貸すことが出来た。

その日も日中の練習で安田に貸していた。

安田が、

「ちょっと汗付いちゃってるから、後で拭いて返すけどそれで良いかな?」

と言ったので、僕は、

「いいよ、そんなの気にしないで。」

と言うと、安田は、

「いつも借りてるのにわるいわ!今日は、ちゃんと拭いて返すから。夕食終わってから、体育館のドアの所で待ってるから!」

と言うと、安田は走って戻っていった。

安田は、最近頻繁に僕に話し掛けてくれる。僕にとって高嶺の花である安田が話し掛けてくれることは、何よりも嬉しいことだが、それと同時に、僕なんかが安田と吊り合うはずがないという気持ちが常にある。

それが安田とは普通に談笑できない理由である。逆に、全く意識していない他の女子部員には、ジョークも冴えるし、自分の良いところを遺憾なく発揮できる。それが安田の前ではできないのである。

せっかく安田が、笑顔で話し掛けてくれても、会話も続かず、気まずい感じになる。他の女子に対する態度とは大違いだ!

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