もう推しとは言えない *番外編更新中
第2章 浮気現場
「…おい。」
その少し不機嫌そうな声にハッとして顔を見上げると、睦人が私を睨むように見ていた。
「…今日も一緒に帰るんだろ。その顔、やめろ。」
「う、うん…ごめんね。」
「謝ってほしいんじゃねぇよ。…お前が笑ってねぇと部員の集中力が落ちるんだよ。」
だから笑ってろ、と睦人。
…それを伝えに来たの?だったらもっと、睦人こそ笑えば良いのに…。
だけど、こういう少し不器用なところが睦人らしくて。
そういうところが…好きだな、っていつも感じてた。
睦人は私をチラリとみてから、すぐに自分の席に戻っていく。
私は…皆の邪魔をしないように、静かにトーナメント表を配って、春大会の時のビデオをポチに渡した。
「あの、これ…春大会の時のビデオ、です。」
「ありがとうございます。」
(はぁ…可愛い)
…ポチが、顧問で良かった。こうして癒されるから。
そんなことを思いながら…私は、ミーティングの時間をやり過ごした。
「…じゃあ、皆、お疲れ。今日確認したことを明日から活かせ。良いな。」
「はいっ。」
「じゃ、解散。…真帆、帰んぞ。」
「うん。」
グイッと私の腕をつかもうとした睦人の手。
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