もう推しとは言えない *番外編更新中
第1章 推しと彼氏
やれやれ、といった様子でため息をついたポチ。
ポチが、ボールをとって私の方に投げようとした時だった。
「…やっ、睦人ぉ…」
「バカ、声出すな…バレんぞ。」
「良いじゃない…背徳感もあって。」
「ふん…まぁ、まだ誰もいねーしな。」
(睦人…!?)
睦人だけじゃない…他に、女子もいる。
姿は見えないけど…甘い声が聞こえてきて、私は思わず俯いた。
俯いても、声は聞こえてくるわけで…。
「…ねぇ、彼女は良いの?」
「は?俺の彼女はお前だろ、亜梨沙。」
「ふふっ…そうだったわね。ね、キスしよ…?」
「あぁ。」
…彼女、って。
ハッキリ、睦人が言ったから…それで、全てを察してしまった。
睦人は…浮気をしていたんだ。
いや、もしかしたら最初から、亜梨沙という女の子と付き合ってて、私はただのオモチャ…遊びに過ぎなかっただけかもしれない。
でも、あんまりだよ…。
二年間も付き合ってきて、睦人は私にキスの一つもしたことはなかった。
それなのに…。
あの女の子には、簡単にキスをするんだね…。
何もしなければ、泣いてしまいそうだったから…私は無理やり笑顔を作る。
「ねぇ、ポチ、早くっ。」