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イドリスの物語

第3章 イドリスの城

イドリスは「もう決めた事だ。話を受けよう。
堅苦しい挨拶などいらない。詳しく状況と相手の特徴を知りたい。勢力もどのくらいのものなのか、指揮は誰が執り行っているのかなどキリがないほど知りたいことばかりなんだ。」

そしてこちらとしてはどのくらいの若い優秀な騎士が集められるのか。
イドリスは一人頭を抱える。

ベンという名の男はこう答えた。
「相手の勢力は50名ほどです。アーサー様はかつては有に1000以上の軍を持っていました。ここ数年アーサー様は気に食わないことがあるとすぐに手を下してしまう傾向にありました。アーサー様の側近であるサムという名のそれは優秀な騎士がいました。皆から慕われておりました。彼は話を聞くのも上手で皆の相談相手ともなっていました。そして第三の妃であるカサブランカ様は自分も手にかけられるのではないかという恐怖をお待ちでした。
その恐怖心から度々精神状態が落ち着かず、サムに相談なさっておりました。

事件はある夜起きました。
カサブランカ様のお部屋を訪れたアーサー様は
お二人の中を疑われ必死の周りの説得にも耳を傾けずに
サムを処刑してしまったのです。
この出来事は騎士たちにとっても悲痛な出来事でありとても見過ごせませんでした。
特にサムと最も親しかったレオという男がいました。レオにとって悲しみの底に突き落とされた状態でアーサー様の率いる騎士としてもはや尽くすことは出来ません。そこで同志を集め今の内乱が起きました。
城から逃げ出した騎士も多々いました。アーサー様のために残った騎士は10人にも満たないのです。
私は騎士ではありませんし戦うことは出来ません。
レオはサムの手解きを受けてきましたので腕は確かです。
アーサー様の現在の実力では勝てないでしょう。」
ベンは力無く最後にそう呟いた。

「サム…サム・グリソムと言ったな。聞き覚えがある。
特に弓矢の腕がずば抜けていたとか。狙えば外した事が無い。いつか会ってみたかったな。まさか亡くなっていたとは。」

イドリスは考え込む。
ますますやりにくくなりそうだな。
そして結束も硬い。はるかにレベルが違う。

イドリスはとんでもない選択をした様だ。
目の前に聳え立つ壁が見えながら、それでもイドリスの足元には進むべき道があった。



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