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イドリスの物語

第5章 渓谷

相変わらず動揺している一行。
ヒソヒソと話す者、怯えた目の者。黙り込み青ざめる者。
思わぬ敵に早々と遭遇してしまった一行。

焦るイドリス。しかし俺にとっての恐怖とは何か。

すると自分の姿が見えた。少々困惑するイドリス。
すると突然、剣を振りかざし襲いかかって来た。
思わず剣を取ろうとしたが剣が無いことに気付く。
焦るイドリスは自分自身が振りかざす剣を間一髪避けた。
そのシーンでふと我に帰ったイドリス。
身体中には汗が滲む。喉がカラカラになっていた。
急いで水を飲むイドリスは荒くなった呼吸を整える。
周りを見ると皆も同じ様な状況であった。
幻覚を見せられて居た様だ。なんてことだ。
敵の手の中で踊らされているかの様だ。
このままでは正気も体力も奪われて終わってしまうかも知れない。

そしてジョシュアもまた怯えていた。
ジョシュアはひどく怯え叫びながら何かを払う様に手足を
バタバタさせていた。
ジョシュアは小さい頃の辛い出来事を思い出して居た。
ジョシュアの両親は父が2歳で亡くなり母もまた病弱であった。
家は貧しくとても生活は苦しかった。近所の人たちが気の毒に思ってか必要なものをいつも届けてくれた。
ジョシュアは貧しいがいつか大人になったら助けてくれた人達に必ず恩を返したいと思っていた。
ただ一人を除いて…
病弱な母は、夫を亡くし体だけでなく心も塞ぎ込みがちになっていた。
そこへ入り浸る男がいた。ジョシュアの家の斜め向かいに住むヘンドリックと言う男だ。
この男がジョシュアを傷つけまた大切な母を何度も弄び
苦しめた。酔ってはうちに上がり込み何度も母を襲った。
そしてジョシュアを殴った。「見るなクソガキッ、あっち行ってろっ」そういうと家からしょっちゅう閉め出された。
ある日また殴られて顔にあざが出来た。一人道端で渦かまっていると声をかけてきた年上の少女がいた。
金髪に長く伸びた髪を編み込んでいる笑顔の可愛い子だった。「どうしたの?泣いているの?怪我しているの?」そう言うと小さなパンを差し出してくれた。
また明日ここを通るわ。また明日会いましょうね。
そう言うと笑顔で去って行った。
また次の日、ジョシュアは少女と約束通り会った。
少女はミリアと名乗った。少女は明るく話しているとジョシュアも気持ちが明るくなった。
いつの間にか好きになっていた。二人は毎日一緒にいた。

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