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イドリスの物語

第5章 渓谷

その場にいたみんなが息を呑み背筋が凍りついた。
ついさっきも渓谷であんなに怖い思いをしたのにも関わらずその事が吹き飛んだ。そして皆恐怖を覚えた。
まるで自分が殺されるのではないか。
蛇に睨まれた蛙の如く。それもとても巨大な蛇。
伯爵の殺意と威圧的な言動は恐れを感じずにはいられない。
周りは黙り込み伯爵とは目が合わないように視線を逸らす者や額に汗が滲み身動きすら取れなくなっただ者もいる。
そこへベンが切り出した。「伯爵様、一刻をも争います。どうか落ち着いて下さい。」さすがにそばに仕えるだけあってベンは冷静だ。
そして周りの空気も感じ取ったのだろう。

ただ他にも冷静な男たちがいた。イドリスとアルトだ。
そしてアルトはこう言った。「さすが皆より恐れられているだけのお方だ。しかし我々を見くびらないで下さい。仕事はしますよ。大丈夫です。イドリス様は優秀です。
そして我々も。なんなら今から軽く手合わせ願いますか?
伯爵様‼︎」闘志剥き出しのアルト。
「まあ待て、そう闘志を出すな、落ち着け。今は冷静に策を練ろう、体力はとっておけ」イドリスがそう言い聞かせた。」
伯爵に「失礼いたしました。彼は私の認める騎士です。どうかお許しを。」と伝えると伯爵は「まぁいいさ、わしはもっと生意気だったがな。若ければ過ちはつきものだ。」
あっさりと事が収まり拍子抜けした。

イドリスはすぐに切り替えて「まずは相手の情報と状況を
お聞かせください。」そう伝えをえると後ろから若い男が表れた。
「それは私の方からお話し致します。初めまして、イドリス様そして若い騎士の皆さん、ミカエルと申します」
イドリスは初めてミカエルと会ったのはこの時だった。

ミカエルは続けて「私ともう一人双子の兄のラファエルです。私たちでなんとか抑えてきました。流石に限界ではあります。相手の腕は一流です。お亡くなりになった軍隊長のサム様の代わりに軍隊長となったレオ様は小さい頃からお世話になり可愛がってもらいました。ですが今は事情があって…」

言葉を濁すミカエル。何か事情がある様だった。
しかし今は考える余裕がない。

するとゴーーーンと大きな音とともに強い揺れが。
一緒にいたアーサー伯爵の子供たちは泣き出した。
クロムウェル軍の誇る大砲が放たれた。
「この城は崩れはしないっ‼︎」伯爵は言い放つ。

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