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イドリスの物語

第3章 イドリスの城

イドリスが領主の村に着いた。
城門の前を流れる川はとても穏やかで印象的だった。
ゆっくりと門が開き川に橋が掛かると橋を渡って領主内へ入った。始めに見えたのが村人たちが家族と共に暮らしながら村を守っている様子だった。
アルトとジョシュアはもう戻れない故郷を思い同時にどこか懐かしくホッともした。
その先を歩くと暫くで芝が綺麗に整えられ、花木がゆっくりと風に揺れている庭園が見えてきた。そして太陽に照らされて白銀のように輝く城に二人は息を呑む。
すぐ側にある厩舎に馬を繋ぐと「城を案内しよう」
二人にイドリスが声をかけた。
二人はこんなにも大きな城に来たのは初めてだった。とてもドキドキする二人。たくさんの使用人がイドリスに会釈をしまた二人を手厚く迎え入れる。
何もかもが新鮮で驚くばかりの二人。すっかり黙ったままの二人を「どうした?何を黙っている?暫く滞在する予定だ。くつろいでくれ。」そう声をかけた。その時だった。
遠くより声が聞こえてきた。「イドリス様ーお待ちくださいませ」向こうより一人の男が近づいてきた。
男は息を切らし「イドリス様、お帰りなさいませ。お待ちしておりました。お戻りになられるならばお知らせくださればお迎えに参りましたのに。」そういうと
「迎えなどいい。それよりも友人を迎えた。手厚くもてなす様に。命の恩人だ。アルトそしてジョシュアだ。宜しく頼む」
そう言い終えるとヨゼフは二人を見た。
「かしこまりました。イドリス様。アルト様、ジョシュア様大変失礼致しました。執事長のヨゼフと申します。イドリス様をお助けくださり感謝致します。お部屋にご案内致しますのでしばしお待ちを。」
そう言ったヨゼフはすかさず「イドリス様、ルコレット伯爵様の御息女ローズ様とのご縁談はいかが致しましょうか?
この戦が終わり次第、ご連絡申し上げますとお伝えしております。またとない縁談ですぞ‼︎伯爵令嬢ともなればこちらの領地も潤いイドリス様の資産の安定はお約束されます。
将来は安泰ですぞ‼︎」
するとイドリスは「そんな結婚はしたくない。必要もない。
断ってくれ。今の資産で十分だ。何も困っちゃいない。」
ヨゼフはガッカリし、「しかしイドリス様・・・」
言いかけたヨゼフに「しつこいぞ、ヨゼフ。当分縁談の話はなしだ‼︎いいな‼︎」そう言い終わると浴室へと消えていったイドリス。

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