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恋人は社長令嬢

第7章 金より地位より欲しいモノ

那々香は、カツカツとヒールを鳴らし、コーヒーショップの中に入った。

なるほど。

大きなツバの付いた帽子を被っていうのは、一人しかいない。

きっとあの人だ。

それにしても、自分の顧客に。あんな中年の人なんていたかしら。

大きな帽子を被れるくらい、個性的な人なら、滅多に忘れる事はないと思うのに……


那々香はそのお客に、ゆっくりと近づいて行った。


「お客様。」

那々香は、お客が座っている席に、近づいた。

「お待たせしました。松森です。」

笑顔で名乗った那々香。

「……あなたが、松森那々香さん?」

「はい。」


おかしい。

自分で呼び出しておいて、逆に聞いてくるなんて。

那々香が一歩、下がった時だった。

そのお客は、水の入ったコップを手に持つと、那々香に思いっきり浴びせかけた。

ヒャッ!という声が、お店に響く。

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