
恋人は社長令嬢
第8章 異性の友達ってヤツ
そう言って至は、那々香の唇に、自分の唇を押し付けた。
数秒後、顔を離してみると、那々香の目からは涙が流れていた。
「那々香?」
「どうして……こんな事、するの?」
「それは、俺が那々香の事、」
「私達、友達だよね……」
そう言って、那々香は立ち上がると、一目散に廊下へと逃げて行った。
10分後、那々香はまたフロアに戻ってきた。
さっきの仕事の、続きをする為だ。
気が重い……
至はまだ、あの場所にいるんだろうか。
ガチャッとドアを開けると、至の茶色の頭が見えた。
ズキッとなる那々香の胸。
どうしよう、行きたくない。
そんな時だ。
「あっ、帰って来た。早く来いよ、松森。」
至の隣に、瞬の笑顔があった。
