義娘のつぼみ〜背徳の誘い〜
第2章 憧れの家族
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五月初旬、茉由は十三歳の誕生日を迎えた。
ゴールデンウィークの最終日となる日曜日、その午後だった。
昼食後、理恵から買い物を頼まれた武司は、自宅からかなり離れたショッピングモールに向けて車を走らせていた。助手席には茉由が座っている。初めての二人きりでの外出だ。
「いい天気だね」
武司は積極的に茉由に話しかけた。学校のこと、好きな芸能人はいないか、今どんなことに興味を持っているのかなど。
「……うん」
だが、彼女はいずれも短く相づちを打つのみで、武司に顔を向けることもしない。
「ごめんね。いきなり二人っきりだと、茉由ちゃんも困るよね」
武司は苦笑混じりに言う。
「お母さんは家中をじっくり掃除したいそうだから、邪魔になる俺たちは外へ追い出されちゃったんだ」
茉由がなかなか武司に懐こうとしないため、二人をしばらく一緒に行動するように仕向けた、理恵のアイデアでもあった。
「それと、今日は茉由ちゃんの誕生日なんでしょ? 買い物リストにケーキも入ってるよ」
「……うん」
茉由は相変わらず、我関せずといった面持ちだ。
ショッピングモールに到着すると、二人は理恵から預かった買い物リストを片手に、あちこちの売り場を歩き回った。
二時間近く掛けて、ひと通りの買い物を終えた。
駐車場の車に荷物を積み終えると、二人は休憩するため、モールの敷地内に併設されたファミレスに入った。
「そうだ、茉由ちゃんの誕生日プレゼントも買わなくちゃね。欲しい物があったら、なんでも買ってあげるから言ってみて?」
武司はアイスコーヒーをひと口啜ると、茉由に尋ねた。
「……え? 別に、いいです」
クリームソーダに浮かぶアイスを、スプーンで突きながら彼女は答える。
「遠慮しなくていいんだよ? 茉由ちゃんは俺の娘なんだし」
「――なんでも、いいんですか?」
茉由は上目遣いで武司を見る。
「うーん、何十万とか何百万もするものだと、さすがに今日すぐには買ってあげられないけど」
クス――ほんの微かに、茉由の口元から笑みが溢れた。
「わたし、そんなに高いもの、思い付かないです」
「そっか、そうだよね。じゃあなにが欲しい?」
「ええと……それじゃあ、ぬいぐるみ」
五月初旬、茉由は十三歳の誕生日を迎えた。
ゴールデンウィークの最終日となる日曜日、その午後だった。
昼食後、理恵から買い物を頼まれた武司は、自宅からかなり離れたショッピングモールに向けて車を走らせていた。助手席には茉由が座っている。初めての二人きりでの外出だ。
「いい天気だね」
武司は積極的に茉由に話しかけた。学校のこと、好きな芸能人はいないか、今どんなことに興味を持っているのかなど。
「……うん」
だが、彼女はいずれも短く相づちを打つのみで、武司に顔を向けることもしない。
「ごめんね。いきなり二人っきりだと、茉由ちゃんも困るよね」
武司は苦笑混じりに言う。
「お母さんは家中をじっくり掃除したいそうだから、邪魔になる俺たちは外へ追い出されちゃったんだ」
茉由がなかなか武司に懐こうとしないため、二人をしばらく一緒に行動するように仕向けた、理恵のアイデアでもあった。
「それと、今日は茉由ちゃんの誕生日なんでしょ? 買い物リストにケーキも入ってるよ」
「……うん」
茉由は相変わらず、我関せずといった面持ちだ。
ショッピングモールに到着すると、二人は理恵から預かった買い物リストを片手に、あちこちの売り場を歩き回った。
二時間近く掛けて、ひと通りの買い物を終えた。
駐車場の車に荷物を積み終えると、二人は休憩するため、モールの敷地内に併設されたファミレスに入った。
「そうだ、茉由ちゃんの誕生日プレゼントも買わなくちゃね。欲しい物があったら、なんでも買ってあげるから言ってみて?」
武司はアイスコーヒーをひと口啜ると、茉由に尋ねた。
「……え? 別に、いいです」
クリームソーダに浮かぶアイスを、スプーンで突きながら彼女は答える。
「遠慮しなくていいんだよ? 茉由ちゃんは俺の娘なんだし」
「――なんでも、いいんですか?」
茉由は上目遣いで武司を見る。
「うーん、何十万とか何百万もするものだと、さすがに今日すぐには買ってあげられないけど」
クス――ほんの微かに、茉由の口元から笑みが溢れた。
「わたし、そんなに高いもの、思い付かないです」
「そっか、そうだよね。じゃあなにが欲しい?」
「ええと……それじゃあ、ぬいぐるみ」