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幸せな報復

第19章 畑野浩志の観察

「もうすぐ、夏休みでしょ? こことは別の場所で…… 勉強したいなって話したの。図書館や喫茶店とか? 自宅でもいいよぉー って……と、そういうことよ…… 変な意味はないから…… 畑野くん、書くのに夢中で、私が言った最初の方が聞こえなかったんだね」
 彼女はあわてて夏休み中の勉強を一緒にしたいと提案した。恵美は図書館や喫茶店で初めは研究すればいい。後から徐々に浩志の家を多くしていけばいい。そして、勘太郎に近づく。彼女は夏休みの間に浩志と勘太郎親子の家庭に入り込み、自分の魅力で虜にすることをもくろんでいた。何しろ自分に痴漢するくらいだから父親は自分の若い体に興味があるはずと自信を持っていた。彼女の計画は勘太郎のスケベ心を取り込んで完璧に進む。自分に痴漢をするほど興味のある勘太郎をたぶらかすことなど容易い。次に淡泊な浩志を少しずつエッチな感じの、タッチをたっぷりしてたまに自分の体を少しずつ接触させ、女の体を知らしめる。彼は私に少しずつのめり込んでいく。
「なんて崇高で完璧な計算され尽くした計画なの? 自分を褒めてあげたいわ」
 彼女は自画自賛した。とにかく、自宅に入り込むため浩志を足がかりとする。彼女の脳では計画はこうして順調に進んでいく予想だった。
 彼女の計画は、浩志の家でたった二人きりになったとき、浩志が恵美に対し性欲を抑えられず狼に変身し恵美に襲いかかり恵美は身を任せてしまう。恵美にはそんなメロドラマを見た気がして、そんなようなざっくりした計画でたぶらかそうとしていた。
 そこまで考えて、恵美はにんまり笑う。
「でも、最後までいかせてあげないの」
 恵美はじらし作戦で、最終の欲望はお預けにするつもりでいた。最後の行為は勘太郎と浩志とわたしの3人で楽しく揃っていきたかった。それに、自分はそれほど安い女ではない。なんてったって学園のアイドルなのだから。しかも、か弱くない。むしろ強いと思う。私は空手の稽古で鍛えた有段者だ。既に指導する立場にいるほど強い。道場では師範の次に強い。力ずくでわたしを犯せるほど甘くない。最後のフィニッシュを無理にしようとすれば、得意の空手技でねじ伏せることなんて容易だ。
 しかし、いろいろ自分で取り繕っている恵美であるが、けだもの族の末裔といえども、恵美は現代に生きていたから、叶うなら好きな人に初めての操を捧げたいと考えていた。

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