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幸せな報復

第19章 畑野浩志の観察

 しかし、恵美は現代の女子大生だけあって、いざとなれば、浩志と男女の関係になってもいい、むしろ、処女を彼で失いたい、とも思っていた。恵美は彼にそうなるよう仕向けているのだからそうなったらなったで処女を上げても良かった。なぜなら、どちらがいいか優劣を付けがたいほどこの親子がどうしょうもなく好きになっていた。ただ、二人とも好きでもどちらかを先にしなければならない。両方に処女は上げられない。どちらにするか、恵美の悩みがまた増えた。
 浩志と最初に男女の関係になれば、父・勘太郎への報復計画も早く進みそうな気がした。
 しかし、勘太郎には体を触られて昇天しかけたこともあり先に交わりたいかも、と思ってもいた。しかし、浩志は匂いだけで昇天しかけたくらいであるから浩志に処女を上げたいかもしれない、と思ったりした。叶うことなら二人同時なら幸せのエネルギーは恵美のキャパシティーを超えるほどになるのではないかとも考えたりした。結局、恵美は選択できない。
 しかし、このように妄想ばかりする彼女は現実に肉体関係に進もうとすると躊躇し踏み込めない。されるがままの女。けだもの族の末裔といえども、彼女もまた、何らかの突然変異で変わっていたのかもしれない。
 そんなだから、恵美は連日浩志の部屋で二人きりになり濃密な男女の関係を続けよう、次の男女としての展開に進もう、と想像すると顔を赤くしていた。そこに勘太郎も加わる。彼女はそんな淫らな想像をすると呼吸が段々荒くなっていく。
 こうして愛を夢見る乙女はいつまでも処女だった。浩志との行為を想像し幸福感に包まれて、想像しただけでこれほど幸福なら、本当に、現実に、浩志と関係を持ったらどんなに幸せなことだろう、とますますうれしさがこみ上げて来た。
 彼女はこみ上げる欲情を抑えようと両腕で自分の体を押さえ込んだ。体を締め付けるたび痛みが欲情を少しだけ抑えてくれる。しかし、それは気休めでしかない。直ぐに大きな欲情がこみ上げてくる。
「ぁあぁー いいぃー」

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